研究課題/領域番号 |
18K12248
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
落合 桃子 福岡大学, 人文学部, 講師 (40434237)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | アジア / 四大陸 / ジャンバッティスタ・ティエポロ / 西洋美術 / バロック |
研究実績の概要 |
西洋美術において「アジア」はどのように表象されてきたのか。これについて本研究では、16世紀から18世紀のヨーロッパで制作された四大陸図(ヨーロッパ・アジア・アフリカ・アメリカ)の「アジア」の寓意表現の収集・分析を通じて、考察を行ってきた。 3年目となる2020年度は、絵画や版画の四大陸図の収集を継続するとともに、近世ヨーロッパ人によるアジア旅行記の挿絵についても調査を実施した。フランス人の旅行家フランソワ・ベルニエ『ムガル帝国誌』(1699年)やイエズス会士ギー・タシャール『シャム旅行記』(1686年)など日本語訳が出版されている著作については、原書に当たって挿絵を確認した。 これまでに収集してきた「アジア」の寓意表現の分析から、以下のことが明らかになってきた。近世ヨーロッパの四大陸図像は大きく2つの系統、すなわち、オランダを中心に制作されたもの(連作版画など)と、イタリア・南ドイツなどカトリック文化圏のもの(フレスコ画など)に分類することができる。アジアの寓意像に関して言えば、いずれにおいてもリーパの『イコノロギア』(初版1593年、1603年)の「アジア」のように、香炉やラクダと共に描かれるのが定型となっていた。しかし、オランダの作例では、インドや中国、日本といった東南アジア・東アジアの人物や文物が描かれることも少なくないのに対して、イタリアや南ドイツの作例では、オスマン帝国など中近東のイメージが登場する傾向が見られた。 こうした知見を具体的な美術作品に即して検討するため、18世紀の四大陸表現の重要かつ最大規模の作例であるティエポロ《アポロと四大陸》(ドイツ・ヴュルツブルク「レジデンツ」「階段の間」フレスコ画、1752-53年)のアジアの寓意表現を取り上げ、図像的特徴を分析した。この研究成果について、2020年12月5日に九州藝術学会にて口頭発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナウィルス感染拡大の影響で、当初予定していた海外調査は実施できなかったが、2020年度までに、絵画・版画の「アジア」図像に加え、17・18世紀のヨーロッパで出版されたインドや中国などのアジア旅行記の挿絵についても収集・分析をすることができた。これまでの研究の集大成として、イタリア人画家ティエポロの《アポロと四大陸》(ドイツ・ヴュルツブルク「レジデンツ」「階段の間」フレスコ画、1752-53年)について学会発表を行い、その内容を広く周知させることもできた。
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今後の研究の推進方策 |
ティエポロ《アポロと四大陸》のアジアの寓意表現について、さらに依頼主のヴュルツブルク司教領主グライフェンクラウ周辺の思想的背景などについても調査を行い、研究成果を論文として発表していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウイルス感染症の感染拡大の影響で、2019年度・2020年度に予定していた海外での資料調査を実施することができなかった。本年度も海外調査が難しい状況であれば、その代替として文献資料等を購入することとしたい。
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