西洋近世美術において「アジア」はどのように表象されてきたのか。本研究では四大陸図(ヨーロッパ・アジア・アフリカ・アメリカ)中のアジアの寓意表現の収集・分析を通じて考察した。連作版画が多いオランダなどの作例と、教会や宮殿の装飾を中心とするイタリアや南ドイツなどカトリック圏の作例に大きく分類することができ、いずれにおいてもアジアはラクダや香炉などと共に描かれるのが定型となっていた。しかし、前者ではインドや中国などの東南アジア・東アジアの人物や文物が描かれることが少なくないのに対し、後者ではオスマン帝国など中近東のイメージが登場する傾向が見られるなど、地域差も浮かび上がってきた。
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