研究課題/領域番号 |
18K12249
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研究機関 | 栃木県立美術館 |
研究代表者 |
鈴木 さとみ 栃木県立美術館, その他部局等, 主任研究員 (70525055)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 工芸 / 竹工芸 / 伝統工芸 / 日本美術 / アメリカ |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、飯塚琅カン齋の制作と活動を軸に、竹工芸を日本近代美術史に位置付けることである。若手研究の2年目となる令和元年度は、米国から里帰りした竹工芸コレクションの調査を中心に、所属研究機関にて開催予定の企画展も見据え、前年度に引き続き、美術資料の調査および文献資料の収集と基礎調査を進めた。 具体的には、令和元年度より日本国内を巡回した「竹工芸名品展:ニューヨークのアビー・コレクション メトロポリタン美術館所蔵」展(会場:大分県立美術館、東京国立近代美術館工芸館、大阪市立東洋陶磁美術館)への調査協力を通して、出品作家や研究者、美術商、来日した欧米のコレクターなど多くの関係者と交流し、米国における竹工芸作品の受容と展開の一例を考察した。同展は竹の作品と巡回館の所蔵品とをあわせて展示していたため、会場により趣向が全く異なっていた。なかでも東京国立近代美術館工芸館では、同時代に制作された他分野の工芸作品と取り合わせており、日本近代工芸史における竹工芸を考察する上で格好の機会となった。さらに、東京会場にあわせ「東京竹芸術祭2019」が都内のギャラリー約20ヵ所で開催され、有名無名問わず近代以降の竹籠を多数実見できたことは、琅カン齋の制作を俯瞰する一助となった。 また、所属研究機関にて次年度に「竹の息吹き-人間国宝 勝城蒼鳳と藤沼昇を中心に」と題する展覧会を開催できることが決定したため、前年度に続き飯塚小カン齋の遺族のもとに残された関連資料の調査を進めるとともに、栃木県在住の重要無形文化財保持者である勝城蒼鳳氏と藤沼昇氏ほか、現在活躍している作家について文献資料を収集し、聞き取り調査を行った。あわせて「栃木の竹工芸家 齋藤文石」展(会場:とちぎ蔵の街美術館)への調査協力も通して、琅カン齋とその弟子たち及び現代の作家まで、日本の竹工芸の展開を考察する準備を進めることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
年内の調査はおおむね達成できたと考えているが、1月以降に予定していた国内及び海外調査は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大予防のため中止もしくは延期となった。
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今後の研究の推進方策 |
飯塚琅カン齋を中心とした調査を今後も継続し、整理していく。遺族のもとに残された資料のほか、琅カン齋が躍進を遂げた1930年代を中心に、雑誌『工芸指導所』、『工藝ニュース』、『民藝』などから、工芸・デザイン界での竹をめぐる活動との関わりについて調査を進める。 同時に、これまでの2年間で得られた国内外の調査対象者との交友関係を活かしながら、新たな調査を実施する。当該年度に実施できなかった海外調査についても、状況を見ながら対象地域を確定し実施していく予定である。 また、2年目の研究途上で所属研究機関にて令和2年度に「竹の息吹き」と題する展覧会を開催できることが決定した。最終年度となる3年目は、飯塚琅カン齋をはじめ、栃木県在住の重要無形文化財保持者である勝城蒼鳳氏と藤沼昇氏ほか、現代の作家の作品を考察して日本の竹工芸の特質を浮き彫りにすることに重点を置き、展覧会の形式と刊行する図録によって成果公表を目指すこととしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度末は新型コロナウイルス感染症の影響で、国内および海外調査を中止せざるを得なかった。次年度も海外調査を含めた研究費の使用が必要であり、研究資料の購入及び調査旅費として使用する予定。
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