研究課題/領域番号 |
18K12250
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研究機関 | 独立行政法人国立文化財機構東京国立博物館 |
研究代表者 |
大橋 美織 独立行政法人国立文化財機構東京国立博物館, 学芸研究部, 研究員 (10584477)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 岡田半江 / 文人画 / 風景表現 / 真景図 / 東アジア |
研究実績の概要 |
本年度は、江戸時代後期における風景表現についての基礎的な調査と研究を行った。特に、本研究の中心に据えた岡田半江に関する基礎資料の収集及び絵画作品の調査に努め、主に個人蔵の半江の作品について、合計31件(掛軸30件、画巻1件)の調査を行い、それぞれについて基礎的なデータを収集し、全図・部分の写真を撮影した。半江は未だ包括的な研究が行われておらず、作品を捜索し所在を明らかにした上での悉皆調査が必要となる。本年度は、実見することのできた31件に加え、新たに個人蔵72件の作品及び書簡の所在を確認している。その72件については、来年度に調査予定である。半江に加え文人画、森派、原派などの個人蔵の風景図10件(掛軸)の調査も行った。 研究成果の一部は、静岡県富士山世界文化遺産センターにて開催の「富士山に迫る」展を記念して行われた講演会にて「江戸時代後期の風景表現について」と題した発表を行った。展覧会の主作品である谷文晁「富士山中真景全図」を交え、広く近世絵画における風景表現の変遷について伝えることができた。 また、本研究の課題の一つである「西洋・中国・朝鮮からの影響を念頭においての近世絵画研究」というテーマを、目に見えるわかりやすい形で広く公開・発信するべく、東京国立博物館における総合文化展示「近世絵画における海外との交流」(本館8室にて2019年6月18日~7月21日展示予定)の準備を行った。主に風景・人物・花鳥作品において、海外との交流を経て生み出された作品を展示予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
岡田半江の研究については、ほぼ予定通りに進捗している。作品の所在確認も想定以上の情報を集めることができたと考える。本年度は研究課題の中でも、特に岡田半江に焦点をしぼった調査活動を行ったため、淵上旭江や江戸時代以前から日本に伝来した西洋・中国・朝鮮絵画の確認作業が課題として残された。
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今後の研究の推進方策 |
主に岡田半江の情報収集と実作品の調査に努めてきたが、現段階において、すでに想定以上に現存作例が多いことが予想される。課題の一つである淵上旭江や伝来の西洋・中国・朝鮮絵画の確認作業にも目を配りつつ、まずは来年度も半江における実作品の調査を優先的に行い、基礎的な情報を整理することを目標としたい。作品に書かれた賛や跋、箱書等を見ることにより、半江の制作態度のみならず、交流関係などの江戸後期文人ネットワークを具体的に探っていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
パソコンおよび周辺機器を購入予定の金額分であったが、年度末の購入を避け、新年度に最新の機種を購入することにした。
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