研究課題/領域番号 |
18K12250
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研究機関 | 独立行政法人国立文化財機構東京国立博物館 |
研究代表者 |
大橋 美織 独立行政法人国立文化財機構東京国立博物館, 学芸研究部, 研究員 (10584477)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 風景画 / 真景図 / 文人画 / 岡田半江 |
研究実績の概要 |
本年度は、江戸時代後期における風景表現についての基礎的な調査と研究を行った。特に、本研究の中心人物である岡田半江に関する基礎資料の収集及び絵画作品の調査に努め、主に個人蔵の半江の作品について、合計78件(掛軸72件、画巻5件、画帖1件)の調査を行い、それぞれについて基礎的なデータ収集し、全図・部分の写真を撮影した。まだ悉皆の途中段階ではあるが、ある程度まとまった数の作品を調査できたことで、作品を編年順に落とし込むことが可能となり、父である岡田米山人の影響が強い時期、半江独自の精緻な作風に至るまでの制作態度の変遷や真贋について知見を深めることができた。 また、目に見えるわかりやすい形で広く公開・発信するべく、東京国立博物館におけるテーマ展示を2つ行った。①本館8室 テーマ展示「故事人物」(2019年7月23日 ~ 2019年9月1日)にて、狩野派・文人画・琳派など様々な流派が描く故事人物を中心に展示。岡田半江「虎渓三笑図」を他流派の作品と並べて見ることができる機会とした。②本館7室・8室 テーマ展示「日本の文人画~中国へのあこがれ~」(2019年10月8日 ~ 2019年11月24日)にて、中国絵画から大きな影響を受けて作品を制作した文人画家たちの作品を展示。 また、台日聯合工作坊(台湾中央研究院)にて行われた「狩野派與中國」に関するシンポジウムで「東京国立博物館所蔵 木挽町狩野家模本について」を発表した際、狩野派模本の風景表現についても合わせて発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
岡田半江の研究については、ほぼ予定通りに進めることができた。作品の所在確認も想定以上の情報を集めることができたと考える。本年度は研究課題の中でも、特に岡田半江に焦点をしぼった調査活動を行ったため、淵上旭江や江戸時代以前から日本に伝来した西洋・中国・朝鮮絵画の確認作業が課題として残された。
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今後の研究の推進方策 |
主に岡田半江の情報収集と実作品の調査に努めてきたが、現段階において、すでに想定以上に現存作例が多いことが予想される。課題の一つである淵上旭江や伝来の西洋・中国・朝鮮絵画の確認作業にも目を配りつつ、まずは来年度も半江における実作品の調査を優先的に行い、基礎的な情報を整理することを目標としたい。作品に書かれた賛や跋、箱書等を見ることにより、半江の制作態度のみならず、交流関係などの江戸後期文人ネットワークを具体的に探っていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
1月末の海外出張費で大きな金額が動くこととなったこと、また3月初めにも調査出張が決まっていたため、残金に不安があり、次年度に希望物品の購入を行うこととしたため。
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備考 |
令和元年8月27日 狩野派與中國/台日聯合工作坊(台湾中央研究院)にて発表 題目:「東京国立博物館所蔵 木挽町狩野家模本について」の中で、狩野派模本における風景表現についても言及。
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