研究課題/領域番号 |
18K12250
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研究機関 | 独立行政法人国立文化財機構東京国立博物館 |
研究代表者 |
大橋 美織 独立行政法人国立文化財機構東京国立博物館, 学芸研究部, 研究員 (10584477)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 風景表現 / 岡田半江 / 耶馬渓 / 帆足杏雨 / 文人画 |
研究実績の概要 |
本年度も未だコロナ感染症の影響があったため、予定していた個人蔵の岡田半江作品調査は延期とした。そのため、調査済の作品情報の整理を可能な限り行った。 また、東京国立博物館の所蔵品を中心に文人画や風景表現が見られる作品調査を行い、その成果の一端としてテーマ展示を行った。本館7・8室「日本の文人画~中国へのあこがれ~」(会期:2022年8月9日~年9月19日) 昨年度より調査対象としていた杜秋艇「耶馬渓図巻」については、論考を『美術フォーラム21』45号にて公開した。耶馬渓(大分県)は、頼山陽が訪れその景観を絶賛したことで一躍有名となった土地である。江戸後期に新たに作られた名所を、豊後日田の画家 秋艇がどのように絵画化したのかを考察したものである。また、頼山陽「耶馬渓図巻」の題跋の内容に沿って、正行寺をはじめ、羅漢寺や耶馬渓各所の実地調査も行った。さらにコロナで調査に行くことは叶わなかったものの、杜秋艇と親交のあった帆足杏雨が描いた2つの「耶馬渓図巻」(韓国国立中央博物館蔵、個人蔵)の画像を借用、題跋や箱書きを翻刻する作業を行っている。こうした調査を通じ、江戸時代後期から明治時代にかけて、耶馬渓が持つ名所イメージの変遷の解明を試みることは、江戸時代後期の風景表現を考える上で極めて意義深いことを認識した。 加えて「東京国立博物館の旧植松家コレクション」と題し、静岡県・沼津市・沼津市教育委員会主催の講演会にて講演を行った(令和4年8月11日)。植松家は原宿(現在の静岡県沼津市原)草創期からの名家で、1978年に植松嘉代子氏により計59件の書画が東京国立博物館に寄贈された。文人画や円山四条派を中心に、作品を通して江戸時代の原と京都文化人との関わりを考察・紹介した。 以上の成果はいずれも、岡田半江・淵上旭江の画業を通じ、江戸時代後期の風景表現についての考察を深める本研究の目的に資するものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ感染症の流行状況により、予定していた岡田半江の作品調査が延期されているためである。個人蔵であるため、先方の事情を鑑み、止むを得ない選択となった。そのため、今年度は、すでに調査済の作品情報の整理、本研究の内容を深めるための関連作品の調査、文字資料の解読、実地調査を進めることとした。
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今後の研究の推進方策 |
今年度も、未だコロナ感染症の流行が落ち着かないこともあり、予定していた作品調査(個人蔵)を延期することとした。来年度は状況が変化すると思うが、注視しつつ、先方との連絡を密にとって調整を行いたい。また状況によっては、今年度のように、江戸後期風景表現を解明するために必要だと判断される事柄について、臨機応変に対応していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ感染症の流行により、予定していた岡田半江の作品調査(個人蔵)が延期となったため。 今年度も、状況を注視しつつ、先方との連絡を密にとって調整を行いたい。
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