研究課題/領域番号 |
18K12251
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研究機関 | 神奈川県立歴史博物館 |
研究代表者 |
橋本 遼太 神奈川県立歴史博物館, 学芸部, 学芸員 (20782840)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 鎌倉 / 禅 / 肖像画 / 絵巻 / 時宗 / 美術史 |
研究実績の概要 |
令和元年度(2019年度)は、研究代表者の所属する神奈川県立歴史博物館において開催した特別展「真教と時衆」を契機にして、遊行上人縁起絵の諸本を拝見する機会に恵まれた。そのなかで気づいたことは、真光寺本における錯簡の存在、そしてその錯簡が他の写本にも見られる点である。この点は公刊論文等での公表には至っていないが、遊行上人縁起絵各写本の転写関係を考える上で看過できない。具体的には以下のとおり。 一遍聖絵がいわば孤高の存在であるのに対し、遊行上人縁起絵巻には複数の写本が存在し、制作の時期をめぐっては近年新説が提示されるなど議論の余地がある。 研究代表者は描写内容の豊かさから、諸本のなかでも真光寺本がより原本に近い内容を持つと考えているが、このたび錯簡と思しき箇所を見出したことでその考えを強くした。錯簡が指摘できるのは巻7第5段、信州善光寺の舞台で念仏をおこなう場面である。絵は門前の風景から始まるが、冒頭の一紙の絵は実はこの前段(巻7第4段)の末尾の絵とつながる。そう判断する理由は、茅屋、橋、岩、霞のいずれもが食い違うことなく一致するからである。他方、別の写本で該当箇所を見ると、巻7第4段末尾の橋と巻7第5段の橋とは互いに接続せず、まったく別々の場面として扱われている。巻7第5段の第一紙目にあるべき巻7第4段末尾の一紙には、真光寺本以外の諸本では小柴垣を紙継ぎにかけて描き足すなど辻褄合わせの表現が認められる。この状況から考えられるのは、①真光寺本は奥書にある1323年の制作からさほど時を隔てず錯簡状態となり、真光寺本そのものかその類本が転写されていった、あるいは②なんらかの理由で錯簡状態で写されていた他本に倣って、のちの時代に真光寺本が錯簡状態に改変された、などの事情が想定できる。いずれにせよ、真光寺本の錯簡の発見は遊行上人縁起絵巻各諸本の転写関係や制作時期を考察するうえで見逃せない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
作品調査の件数自体は当初予定に満たないが、研究課題を遂行するうえでの重要作例の調査は達成できている。
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今後の研究の推進方策 |
発注者や制作集団あるいは制作年などのいずれかが明らかな作品を中心として、作品調査を引き続きおこなう予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
作品調査件数が予定を下回ったため旅費に若干の繰り越しが生じたが、次年度以降に調査の計画を立てている。
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