研究課題/領域番号 |
18K12251
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研究機関 | 神奈川県立歴史博物館 |
研究代表者 |
橋本 遼太 神奈川県立歴史博物館, 学芸部, 学芸員 (20782840)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 鎌倉 / 禅 / 肖像 / 肖像画 / 絵巻 / 時宗 / 十王 |
研究実績の概要 |
令和3年度(2021年度)は依然として新型コロナウイルス感染症の流行が続き、外部機関所蔵の作品の調査が難しい期間が大半を占めた。 そのなか、研究代表者が所属する神奈川県立歴史博物館において特別展「重要文化財修理完成記念 十王図」を開催し、南宋から元時代に制作された神奈川県立歴史博物館本十王図と同系統の図像を示す複数件の十王図を集中して実見することができた。具体的には、総世寺本(中国明時代、14世紀)、根津美術館本(室町時代、15世紀)、西教寺本(高麗~朝鮮時代、14~15世紀)、建長寺本(室町時代、15~16世紀)、能永寺本(室町時代、16世紀)、神照寺本(室町時代および江戸時代、15世紀および17世紀)、大倉集古館本(江戸時代、17世紀)を熟覧調査する機会を頂戴した。また海住山寺本については2021年秋の寺宝特別公開の際に拝見する機会を得た。 本研究課題を進めるなかで、神奈川県小田原市に所在する阿育王山総世寺の十王二使者図の存在を確認し、総世寺本が十王図10幅に加えて2幅の使者像を一具に含む希有な作例であること、さらにおもに画中水墨山水図の絵画様式から明時代初期の制作と考えられること、そして直符使者の図像を理解するためには仏教経典だけではなく道教経典を参照する必要があることを明らかにした。根津美術館本については、これが室町時代の前半の15世紀に宮廷絵所周辺で制作された可能性を提起し、神奈川県立歴史博物館本、大徳寺本、海住山寺本、総世寺本などの将来十王図が15世紀初頭の時点で宮廷絵師が実見できる環境に存在したことを明らかにした。そのほか、室町時代や江戸時代の転写本を実査することにより同系統の十王図が、従来想定されていた以上に写され、享受されていた事実を明確に示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和3年度(2021年度)は新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴い外部機関所蔵作品の調査が困難な状況が続いた。
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今後の研究の推進方策 |
コロナウイルス感染症の感染状況を見極めつつ、おもに外部機関所蔵の資料について熟覧調査を計画し、実施に努める。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの感染拡大により調査旅費を使用する機会が少なかったため、次年度への繰越が発生した。
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