研究課題/領域番号 |
18K12253
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研究機関 | 公益財団法人大阪市博物館協会(大阪文化財研究所、大阪歴史博物館、大阪市立美術館、大阪市立東洋陶磁美術 |
研究代表者 |
鄭 銀珍 公益財団法人大阪市博物館協会(大阪文化財研究所、大阪歴史博物館、大阪市立美術館、大阪市立東洋陶磁美術, 大阪市立東洋陶磁美術館, 学芸員 (20531263)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 高麗青磁 / 韓国陶磁史 / 東アジア / 青磁 / 窯址 |
研究実績の概要 |
高麗青磁は韓国のほか、中国や日本をはじめとする地域でも陶片が出土しているため、生産から需要、流通にいたるその全体像を東アジア陶磁史の視点から多角的に比較考察するのが本研究の目的である。 本年度は、近代の初期段階で形成された貴重な高麗青磁コレクションを所蔵するアメリカのボストン美術館とフリーア美術館で調査を行い、とくに、同コレクションに混入している近代の再現品を判別した。両コレクションに対してこのような調査が行われたのは、おそらく初めてのことと思われる。また韓国では、京畿道博物館および国立全州博物館で行われた高麗王朝時代に関する展覧会に合わせて、高麗青磁の主要な産地である康津窯址と扶安窯址出土品を調査した。両窯址の陶片と伝世品(完品)を照らし合わせることにより、産地を特定できるような根拠や資料を収集した。 韓国本国での高麗青磁の生産と需要にかかわる最も基本的な問題のひとつとして、どのような器種が作られ、それらをどのような用途に使ったのかが、これまであいまいなままにされてきた。これは使用できる文献資料がほとんど存在しないためではあるが、いわばそうした問題を素通りしたまま、産地や編年、美的価値などが論じられてきたと言ってよい。2018年度には、本研究者が勤務先である大阪市立東洋陶磁美術館で特別展「高麗青磁-ヒスイのきらめき」を企画し、その際、用途別の展示を試み、また図録論文で用途とその文化的背景を論じた。これは、従来さまざまな論文や解説で個別に触れられてきた用途の問題を現時点で集大成するものであり、一般の来館者はもとより、韓国や日本の複数の研究機関の研究者からも好評を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
勤務先での大型展覧会で高麗青磁研究の用途をあえて整理できたことが、大きな進展だった。
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今後の研究の推進方策 |
ふたつの方面で同時に調査を進める予定である。ひとつは、高麗青磁の産地、編年および東アジア各地での流通、需要に関する先行研究全般を改めて整理すること。もうひとつは、今年度、韓国の扶安青磁博物館で窯跡調査にかんする展覧会が開かれるため、それを参観し、担当者から情報を収集する。また康津(高麗)青磁博物館による窯址発掘調査が行われているため、その現場での資料の収集および研究者との交流を行う。さらに同時代の中国青磁との影響関係も考察するため、中国青磁の窯址調査も行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
中国窯址の調査研究を予定していたが、発掘調査の進展や成果が見込まれてなかったため、中国出張を延期した。
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