研究課題/領域番号 |
18K12254
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研究機関 | 独立行政法人国立文化財機構奈良国立博物館 |
研究代表者 |
山口 隆介 独立行政法人国立文化財機構奈良国立博物館, その他部局等, 主任研究員 (10623556)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 快慶 / 三尺阿弥陀 / 工房制作 / 分業体制 / X線CTスキャン調査 |
研究実績の概要 |
本年度は、快慶銘を有する未調査の「三尺阿弥陀」のうち三重・安楽寺像の実査及び奈良国立博物館内におけるX線CTスキャン調査を実施し(7/16~21)、得られたデータから木取り及び木寄せ法の特徴を抽出した。また、快慶作品のうち京都・醍醐寺不動明王像(5/30)、同・悲田院阿弥陀如来像(同)、和歌山・金剛峯寺執金剛神像及び深沙大将像(12/5)、同・遍照光院阿弥陀如来像(12/6)、同・光臺院阿弥陀如来及び両脇侍像(12/7)、同・金剛峯寺孔雀明王像(1/15)、京都・大報恩寺十大弟子像(1/28、3/13~14)、無銘記作品のうち大阪・藤田美術館阿弥陀如来像(10/30)、京都・正法寺阿弥陀如来像(12/14)、同・青蓮院兜跋毘沙門天像(1/23)の実査及び高精細デジタル中判カメラ(Phase One)によるフルカラー画像の撮影を実施した。このほか、京都・大行寺阿弥陀如来像、岡山・東壽院阿弥陀如来像、石川・尾添区阿弥陀如来像の予備調査を行った。 X線CTスキャン調査の成果の一部は、9月2日に京都国立博物館で開催された研究発表と座談会「仏師とその工房をめぐる諸問題」において「快慶と工房制作―快慶展の知見をふまえて―」と題して口頭発表し、発表内容を活字化した報告書(44頁)が3月に刊行された。現時点までの調査で快慶の三尺以下の立像作品は、無位時代には両肩別材矧ぎが多く、法橋・法眼時代には左肩割矧ぎ・右肩別材矧ぎ、ないしは両肩割矧ぎが多い傾向にあることが明らかとなってきた。左肩を割矧ぐという体側に沿って垂下する左手を体幹部と共木で彫出する木取りはきわめて合理的であり、この点に快慶工房の需要の増加にともなう制作技法上の進展を認めることができるかもしれない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
快慶真作の「三尺阿弥陀」のX線CTスキャンデータは、本研究の基礎資料となるものだが、本年度は所蔵者の都合などにより1件の実施にとどまった。しかし、残りの2件についても次年度に実施すべく予備調査を済ませており、全体としてはおおむね順調に進展している。また、次年度に順延した分の時間を利用して、三尺阿弥陀以外の快慶作品や、快慶作と推定される関連作品の実査及びフルカラー画像の撮影を進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は京都・大行寺阿弥陀如来像、岡山・東壽院阿弥陀如来像の実査及び奈良国立博物館内におけるX線CTスキャン調査を実施し、ひきつづきデータの収集に努める。調査により得られた知見や各種データは、奈良国立博物館が数年後に刊行を目指している学術書に反映させる予定であり、次年度はこれの編集に着手する。
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次年度使用額が生じた理由 |
京都・大行寺阿弥陀如来像と岡山・東壽院阿弥陀如来像の調査が現地での予備調査にとどまり、奈良国立博物館へ輸送しての実査及びX線CTスキャン調査が順延となったため。両像の本調査は次年度に実施し、当該助成金は輸送費にあてる。
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