本研究では、フィルムスキャン作業にかかるコストが高いために生じる問題を打開するため、独自開発したフィルムスキャナを活用し、インデックス整理のためのスキャニングを行う手法を提案した。最初から高スペックな装置でデジタルマスターを制作するのではなく、まずは大量処理に適したフィルムスキャナでインデックス整理をして重要な資料を絞り込むことにより、全体としてアーカイビングの効率向上させるというアプローチである。 国内の小型フィルムを所蔵する個人や施設等に、独自開発した安価かつ安全なフィルムスキャナ装置と、これを用いた前述の手法とを紹介し、複数から協力を得ることができた。一例としては、公益財団法人目黒寄生虫館が所蔵するフィルム映像資料のデジタル化に着手することができた。 研究の最終的なゴールは、アーカイビングではなく、デジタル化した資料の活用にある。研究計画でも触れたように、フィルムの所有者が積極的に資料を提供してもよいと思えるよう、映画フィルムの発掘と保存の活動がビジネスとしても成立しうる可能性を示したいと考えていたが、実際に映像関連企業からの問い合わせがあり、意見を交わすことができた。 さらに、フィルムスキャナ装置を運用する中で、改良すべき箇所や新たな工夫の余地に気付かされ、運用方法や画像処理ソフトウェア等を格段に進歩させることができた。 映像機器展示会への出品、ワークショップ等も検討していたが、新型コロナウィルスのため、残念ながら実施できなかった。
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