本年度では、昨年度までの作品試作やスタジオ構築による基盤的な知見をもとに、より実践的なキャプチャリングシステムとしての改良をすすめ、芸術表現を前提とした4Dスキャンデータを扱うキャプチャスタジオとしての効率的な運用と、人物のスキャン技術やノウハウに関して重点的に開発を行った。新たな芸術作品としての応用を見据えた試作を繰り返しながら、昨年度に構築した68台の2kヴィデオカメラ入力による時間的な4Dスキャンデータを取得するスタジオをベースに、広角撮影4kカメラ28台と、細部をキャプチャするマクロ4kカメラ26台の計54台からなる、4Kソース撮影システムを新たに組み込み、2kソースからなる復元4D形状のキャプチャノイズや、キャプチャ範囲などの課題を大幅に改善した。芸術表現としての考察と本研究上で得た知見から「人物の上半身」を表現効果の高い撮影対象として設定し、人物の情動や知覚反応を緻密かつ繊細に4Dキャプチャするシステムとフローを確立した。これらの改善や試作において、4Dスキャンメディアが持ちうる表現可能性や効果などを蓄積しながら、4Dスキャンデータの編集・描画を可能にする独自のリアルタイムレンダリングシステムの開発を行い、新しい芸術表現を目指した。 また2020年度に当初予定していた成果展示発表などに関しては、コロナ禍の影響で海外・国内を問わず展示開催が中止となったため、研究成果や発表などの場としてWEBでの展開を重視し、本研究で取り扱っている4Dスキャンメディアおよびその周辺領域(ヴォリューメトリックキャプチャ、フォトグラメトリ、XRなど)の表現可能性やメディア性などを包括的に扱う独自のプロジェクトサイトとして「shashin1799.org」を構築・発表した。WEB上の取り組みとして、オンライン展示に参加し、shashin1799.orgサイトとしての展示発表を行った。
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