研究課題/領域番号 |
18K12259
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研究機関 | 東京藝術大学 |
研究代表者 |
下西 進 東京藝術大学, 大学院美術研究科, 研究員 (10760811)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 現代写真 / 日本写真 / 写真表現 / 写真史 / カメラ雑紙 |
研究実績の概要 |
平成30年度は、大きく分けて二つの作業を行った。一つ目は、東京芸術大学に収蔵される山岸旧蔵(山岸章二および妻享子の旧蔵書)の書籍資料の調査研究である。この資料の外観や奥付、署名等を全て複写した上で、資料を丹念に調査した。資料を念入りに調査することにより、山岸章二が『カメラ毎日』や写真集を編集する上で使用したと思われる重要な文献がいくつか見つかった。 二つ目は、海外に活動の幅を広げた山岸章二の業績を調査するための取材調査である。本調査では、山岸が米国で開催した展覧会「JAPAN: A SELF-PORTRAIT」展(国際写真センター、1979年)において山岸のアシスタントを務めた朽木ゆり子(米国在住、ジャーナリスト)や、米国で日本写真を研究するサンドラ・フィリップス(サンフランシスコ近代美術館シニアキュレーター)などに取材し、山岸が担当した展覧会の様子や山岸の影響など、米国拠点の研究者の視点を探る事ができた。 上記二つの作業に加え、1960-70年代の日本写真を研究する欧米の研究者たちと意見交換する場などを設け、国際的な視点から山岸の活動を研究する足がかりができた。特筆すべき点として、欧米のいくつかの研究機関に山岸の直筆の書簡がアーカイブされていることが判明した。これにより、山岸の足跡の一部が明らかとなった。 山岸の欧米での活動の様子を調査するには更なる課題も多いが、これまでの研究により、山岸章二の人物像や彼の果たした業績を検証するには、ある程度の情報が集まったと言える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
山岸旧蔵の書籍資料をリスト化することにより、膨大な数の書籍資料を検索し易くなった。また、資料を丹念に調査することで、これまで不明だった山岸の足跡が一部明らかになった。さらに、欧米の研究者と情報交換の場を設ける事で、貴重な情報も入手することができた。 平成30年度は、これらの作業により研究全体が進行したため、おおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
令和元年度は、前年度に行った方法を引き続き継続して研究を進める。山岸と直接交流があった人物の取材調査や、山岸旧蔵の資料調査で拾い上げた情報を基に、山岸が『カメラ毎日』の編集や展覧会開催のためにどのような人物と交流し、いかなる方法で仕事を進めたのかを明らかにする。 前述した通り、これまでの調査で欧米の研究機関に山岸の直筆の書簡がアーカイブされていることが判ったが、今後これらの書簡の詳細を調査し、他の書簡等が残されていないかなど、山岸の足跡を知る上で重要な手がかりとなる文献の調査を行う。 最終年度には、東京芸術大学に収蔵される山岸旧蔵の資料や他の関連資料の展覧会を開催する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度はインタビュー協力者への謝金に加え、膨大な量の資料の複写や記録撮影に人権費が発生したが、インタビュー取材の一部が次年度に延期した上、資料の複写撮影の一部も次年度に延期した。このため、これらの謝金や人件費が次年度使用額となってしまった。当該年度に実行出来なかった調査研究に加え、資料の複写等を翌年度に実施する計画である。
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