研究課題/領域番号 |
18K12259
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研究機関 | 東京藝術大学 |
研究代表者 |
下西 進 東京藝術大学, 大学院美術研究科, 研究員 (10760811)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 日本写真史 / 現代写真 / 写真表現 / 山岸章二 / カメラ毎日 |
研究実績の概要 |
令和2年度は、大きく分けて三つの作業を行なった。一つ目は前年度から引き続き、東京芸術大学に収蔵される山岸旧蔵資料(山岸章二(1928-1979年)および山岸享子(1940-2018年)の旧蔵書)の調査研究の継続である。この調査では、1979年に出版された展覧会図録に山岸章二が書籍の余白に直接書き込んだ手書きの原稿が見つかるなど、新たな発見があった。 二つ目は、各地の研究機関にアーカイブされる山岸章二関連資料の調査である。ニューヨーク近代美術館やフランス国立図書館に収蔵される山岸直筆の書簡の複写を手に入れ、また高知県立美術館石元泰博フォトセンターに収蔵される小さな書簡を直接確認することで、山岸本人の筆跡の特徴をつかむことができた。山岸章二は編集者として数多くの執筆を行なった一方、現存する彼の直筆原稿は数少なく、残された山岸の文字の特徴をつかむことで、彼が書き残した可能性のあるメモなどの判別資料となった。 三つ目は、山岸章二が撮影した写真の分析である。山岸旧蔵の一次資料には写真フィルムが多く含まれ、これらの写真の細部を分析することで世界を旅した山岸の行動や足取りがより鮮明になってきた。東欧で撮影した写真群からはプラハ郊外を歩いた具体的な場所が判り、南米で撮影した写真群には山岸がブラジル各地を移動した様子が記録されていた。さらに、これらの写真群には、米国で山岸とジョン・シャーカフスキー(ニューヨーク近代美術館写真部門キュレーター、1925-2007年)が親しく交流する様子や、ブラジルで山岸と新正卓(写真家、1936年-)と交流する様子などが記録されており、山岸が手がけた一連の仕事と関係づける彼の日常性が確認できた。 今後の展望として、本研究で得られた成果とともに山岸旧蔵の未公開資料を公開し、山岸の活動の全体像を俯瞰視する研究発表を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和2年度は新型コロナウイルス拡大の影響により、研究機関の利用や各地への移動、取材調査等が大幅に制限され、本研究の実施に遅れが生じた。そのため、研究期間を1年延長した。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウイルス拡大の影響により、本研究発表である展覧会開催が難しい状況となった。そのため、オンライン上を前提とした研究発表を行なう予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス拡大の影響により研究機関の利用が制限されたため、研究方法の変更を余儀なくされ、研究期間を一年延長した。これにより、次年度使用額が生じた。次年度の予算は、調査研究の旅費や研究発表に必要な物品や消耗品の購入、研究補助員の人件費に充てる。
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