研究実績の概要 |
令和2年度はコロナ禍で海外調査ができなかったため、令和3年度は海外調査に行く機会をうかがっていたが、コロナ禍が収束することはなく、結局海外調査は不可能となった。そのため、当初計画していた米国オハイオ州での調査は断念せざるを得なかった。シャーマン・リーが長年活動拠点としたクリーブランド美術館を訪ねて、アーカイブ調査で新資料の発掘することができなかったことは大変残念である。研究期間を令和4年度まで1年延長し、海外調査の可能性を探ることとした。
海外調査の代替計画である国内調査は、前年度から本格的に始めたGHQ/SCAP文書の電子化作業を中心に行った。GHQ/SCAP文書は占領軍の記録文書だが、シャーマン・リーが所属していたCollection, Arts, and Monuments Division (A&M) の文書、特にリーの在籍期間中のものを、国立国会図書館から取り寄せた。マイクロフィッシュ化されているこの文書を、高性能スキャナーで読み取り、拡大して解読する作業を中心に進めた。コロナ禍で補助人員を雇用することができないため、スキャンには時間がかかったが、一通り終了し、解読も進んでいる。
当初は、GHQ/SCAP文書を読むことによって、共にA&Mに勤務したアメリカの若手アジア美術研究者たちの人脈と、戦後の本国での美術館活動との関係を明らかにすることができると考えていたが、読み進めるうちに、それに加えて、日本の官僚(文部省)や美術史家、美術品所蔵家らとの関係なども具体的に読み取れた。
|