本研究は、映像を再生するディスプレイを中心に音を割り振って再生する従来の環境を崩して再配置し、新たな映像再生環境とサウンドデザインによって可能となる表現を確立することを目的とする。実空間とディスプレイ内の世界の「音の関わり」に目を向け、フレームアウトの拡張を試みた。 研究初年度は制作と展示を通して表現の可能性を探った。最終年度は、さらなる可能性を探るために制作と発表を継続して行い、並行して本研究によって得られた知見を体系化した。本手法を共有することは可能かを検証するために、映像作家に本手法を用いて作品制作することを依頼し、展示発表を行なった。アニメーション作家のにわあやのに依頼し、展示のディレクション、空間構成、アニメーション制作はにわが担当し、研究代表者はにわの指示に従ってサウンドデザインのみを担当した。 本研究では、スピーカーの配置も含めたサウンドデザインによって構成するため、再生する映像と再生環境を限定的なものにした。映像はシンプルなアニメーション、音はアニメーション内の世界で発せられる物理的な音響のみを描写した。展示で使用した機材は、ディスプレイとスピーカーを有線ケーブルで結線したセットを用いた。スピーカーはLとRのステレオフォニック再生をデフォルトし、その配置を変えることによってバリエーションを展開する。実空間とアニメーションに合わせたサウンドデザインでは、スピーカーが配置されている2点を結ぶ線上において、発音のタイミング、音のテクスチャー、パンニングによる定位といった要素を操作することよって、フレームアウトの描写が可能となった。
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