研究課題/領域番号 |
18K12273
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
川島 希 名古屋大学, 医学部附属病院, 助教 (30772264)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 漢方医学 / 小児科学 / 医史学 / 系統樹 / 光学認識装置 / 電子テキスト翻刻 |
研究実績の概要 |
小児漢方医学は明治時代以前の日本では正統医学であり、西洋の小児科学が採用された今日でも一部併用されている。しかし今日の小児漢方医学が展開されるに至る歴史的経緯は明らかではない。そこで明治時代以前の小児漢方医学文献の電子テキスト化とデータベース構築に基づいて文献の系統樹作成を行い小児漢方医学の変遷を解明するとともに、現代小児科学への臨床応用可能性を検討することが本研究の目的である。 本年度ではまず既存研究を参照に本邦の小児科史を概説した。文献が残る奈良時代「養老律令」(757)に唐「太医署」を継承した「少小」5年制教育が規定されたことに本邦の小児科史は始まり、平安時代では現存最古の本邦医書『医心方』(丹波康頼、984)巻25に小児部が記載された。『遐齢小児方』(曲直瀬道三、1566)を端緒に小児科専門書も多数上梓されたが、専門分科が進んだ中国とは異なり、本邦では内科医の多くも小児診療をおこない小児科関連文献を残した。続いて本邦における小児漢方医学文献リストを作成した。真柳誠『日本の医薬・博物著述年表』増訂版より写本・版本を含んだ109件の小児科専門書が同定された。また『日本小児科医史』(珠玖捨男、1964)から前述の文献との重複も含めて小児漢方医学に関連した23文献を同定した。この23件中7件(30%)は既にテキスト翻刻されており、これらより治療法などを抽出したデータベースを構築した。残る16件中、京都大学富士川文庫よりクリエイティブ・コモンズとして一般公開されたデジタル画像を元データとして和漢古典文献に特化した光学認識装置(OCR)を用いて、本年度は6文献(26%)全198頁を電子テキスト化した。OCRおよび一次校正後の認識率は約90%程度であり、研究代表者および古典専門家、OCR技術者による目視による二次・三次校正を経て、全文ほぼ100%の電子テキスト翻刻を完了した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
小児漢方医学の歴史的経緯を研究する上で重要文献と考えられる23件中、17件(74%)の電子テキスト化を達成した。目視による校正を加えることで、通常の光学認識テキスト化だけでは得られないような高精度テキスト化がされており、正確性の高いデータベースを構築するに十分な元データを作成することができたと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
小児漢方医学の歴史を解明するうえで重要と考えられる文献の電子テキスト化を更に進める。電子テキスト化したデータをもとに今後、文献統計学的検討を行うためのデータベース構築を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
小児漢方医学の系統解析に必要であると考えられる文献資料で、いまだ電子画像化や電子テキスト化がなされていないものが今期の研究で同定されている。これらの文献の電子画像化、および光学認識による電子テキスト化とその校正の費用が必要である。
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