本研究は、近代日本の植民地であった東アジア、とくに台湾・韓国・中国(旧満州)において、公衆衛生政策の展開をとおして、公衆浴場と清潔規範が結びつけられる過程を検討するものである。 2020年度以降は、新型コロナウイルス流行で海外渡航が制限されていたことにより国内の資料調査を中心におこなってきた。とくに、植民地衛生に関する雑誌や刊行物、また当時の観光資料なども検討してきた。また、2022年度からの新型コロナウイルス対策緩和により、海外で公衆衛生政策と公衆浴場・入浴施設に関する文献・資料収集を再開した。ただし、新型コロナウイルス流行の影響は大きかった点は否めず、2023年度までの研究計画は当初の予定どおりとはいかなかった側面もある。 2023年度は、海外での文献・資料調査については韓国を中心に行った。とくに韓国・仁川市で調査を再開し、戦前の日本の浴場施設などに関する資料を渉猟した。加えて、これまでと同様に国内調査も継続した。植民地下の公衆衛生政策や植民地での公衆浴場・入浴施設について、新聞資料や当時の雑誌などを検討するとともに、これまで資料調査などを含め分析・整理した。 2023年度は、これまでの調査をもとに、植民地文化学会フォーラム「100年目の関東大震災」 で「関東大震災と植民地統治下の公衆浴場 」として報告した。なお、この報告内容を「植民地文化研究」(植民地文化学会)で同タイトルで発表した。
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