研究課題/領域番号 |
18K12277
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
熊野 弘子 関西大学, 東西学術研究所, 非常勤研究員 (60720117)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 中国医学の受容 / 伝統医学 / 東洋医学 / 東アジアの医学 / 証 / 江戸時代 / 岡本一抱 |
研究実績の概要 |
本研究は、近世日本における中国医学の受容と展開をみるものである。とりわけ、診断・治療に関する医学理論や具体的な疾患など臨床的な視点に立って日・中比較、新・旧比較検討をしている。また、西洋医学と東洋医学と双方の医学に立脚して診断・治療が行われている現代日本の伝統東洋医学に研究成果を応用し、還元することも目指している。 これまで、研究代表者は曲直瀬道三やその流派たる道三流の個別具体的な疾患に対する診断・治療、証に関する理論などの研究、また道三流に限らず、近世の日本において中国医学から受容・展開されてきた診断・治療法、診察法などの研究を行ってきた。 そのうち、本年度では、江戸期の著明な医者であった岡本一抱の著作において、ストレス社会の現代に多い情志の失調について述べられている臨床的な箇所に着目し考察した。新・旧(現代・近世)比較をするうえで、まず多数の考え方がある現在の東洋医学理論のあり方を再確認・整理し、そして江戸期の岡本一抱の考えや治療のポイントを探った。 そこで述べられる情志と五臓との関連において、たとえば肝と怒・心と喜・脾と思・肺と憂・腎と恐との関連など、現在と共通する点が見られるのみならず、岡本一抱独自の視点・後学への注意点・陥りやすい誤判断の提示など、現在とはやや相違する点や、ほかにも臓腑弁証や五行学説などを確認し、そこから現代においても有益な臨床的知見が得られた。執筆・投稿し、熊野弘子「岡本一抱『医学三蔵弁解』における情志――現代中医学と比較して」(井上克人編著『東アジア圏における文化交渉の軌跡と展望』関西大学、2020年2月5日)として刊行されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在と近世の東洋医学書の比較検討をするにあたって、まず現代の東洋医学を把握したり、近世の医書を探ったりする計画を立て、予定通り進行した前年度を受けて、近世の医書『医学三蔵弁解』などを考察して執筆に取り掛かかった。刊行され、流通している。
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今後の研究の推進方策 |
世界保健機関(WHO)が公表した国際疾病分類の第11回改訂版(ICD-11)において、伝統医学分類(漢方・鍼灸)が収載され、伝統医学病分類・伝統医学的証分類が導入された。こうした証分類をこれまで研究代表者は弁証論治などの東洋医学理論の研究で扱ってきた。東洋医学研究において科学的のみならず伝統的なアプローチも国際的に重視されている現在、引き続き現代への臨床応用や教育現場への還元も考慮しつつ、中国医書・近世の日本医書の検討を進め、論文投稿・発表などにて研究成果を公開していく。
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