本年度は、本研究の最終年度であり、本来の計画であれば本研究のまとめとして国際的なシンポジウムを開催する予定であったが、世界的なcovid-19の流行により、そのような大規模な国際研究集会を計画のような形で開催することが不可能になった。しかし、一方ではオンラインミーティングを活用することで、過去二年間に築いた国際的なネットワークを維持することができ、今後の国際的な研究をオンラインも想定しながら進めるうえで役立つような経験を積むことができた。 具体的には、北米の在日朝鮮人文学及び日本近代文学を専門とする若手研究者たちとのネットワーク(Zainichi Studies Consortium)では、9月以降、毎月一回のペースでオンライン研究会を開催している。代表者は9月の回に、拙論をもとにした報告を行った。このオンライン研究会は現在も継続しており、コロナの状況をみながら今後の国際研究集会を計画している最中である。 また、2020年8月15日には拙著『〈焼跡〉の戦後空間論』の韓国語訳が韓国で出版された。この韓国語版出版に関するイベントも今後韓国で開催される予定であり、引き続き韓国の研究者との交流が続く予定である。 本年度の以上のような国際研究成果に加えて、本研究全体では論文5件発表、著書(単著・共著)3件、研究発表(国内・国外)10件の成果を出した。本研究が目的としていた冷戦期の在日朝鮮人文学における〈移動〉の表象について分析と考察はこれらの研究成果として国内外に発表できた。
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