研究課題/領域番号 |
18K12284
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
大島 絵莉香 名古屋大学, 人文学研究科, 研究員 (30761746)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 五山版 / 山谷詩集注 / 黄庭堅 / 抄物 / 漢文抄 |
研究実績の概要 |
本研究は、宋代の詩人、黄庭堅(号は山谷)の詩集である、五山版『山谷黄先生大全詩註』・『山谷詩集注』における書入れのうち、禅僧の号等が冠された説を対象とする。これら山谷詩五山版書入れを、現存する山谷詩漢文抄、万里集九『帳中香』、月舟寿桂『山谷幻雲抄』、彭叔守仙『山谷詩集注』の説と照合・精査することにより、いかに五山版の書入れが山谷詩漢文抄に取り入れられたか、あるいは山谷詩漢文抄の説が五山版に書き入れられたのかについて検討することにより、本邦禅林における山谷詩の説の継承と展開について、山谷詩漢文抄のみならず、その前後を含めた、より長いスパンで明らかにすることを目的とする。 平成30年度において、主な調査対象としたのは、西尾市岩瀬文庫蔵『山谷詩集注』における書入れである。岩瀬文庫蔵本の書入れに冠される禅僧の号が、現存する最古の山谷詩漢文抄『帳中香』の抄者である万里よりも古い年代の禅僧ばかりであるため、岩瀬文庫蔵本の書入れ時期が、現存する山谷詩漢文抄の成立よりも以前であろうことに着目した。さらにこの書入れを、現存する山谷詩漢文抄である万里集九『帳中香』、月舟寿桂『山谷幻雲抄』、彭叔守仙『山谷詩集注』と比較検討することで、いかに書入れが山谷詩漢文抄に取り入れられ、いかに展開したかを想定した。 その成果を「西尾市岩瀬文庫蔵五山版『山谷詩集注』における書き入れについて─黄山谷詩漢文抄との関わりから―」の題目で、日本宋代文学学会第5回大会(5月26日、慶応義塾大学日吉キャンパス)において口頭発表し、未刊行ではあるが、論文も執筆した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の進捗状況を、おおむね順調に進展していると判断する根拠は、下記の2点である。(1)平成30年度に実施予定であった、西尾市岩瀬文庫蔵『山谷詩集注』における書入れ調査、また山谷詩漢文抄との比較検討、口頭発表、また、論文化を果たしたためである。また、(2)平成31年度(令和元年)に実施予定であった、大東急記念文庫蔵本『山谷黄先生詩集注』書入れの調査にすでにとりかかっており、巻4までの書入れの抄写を済ませているためである。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度に引き続き、大東急記念文庫蔵『山谷詩集注』書入れをはじめ、他の山谷詩五山版書入れを、現存する山谷詩漢文抄と比較検討をし、論文化したい。 また、平成31年度(令和元年)は、科研費採択課題の関連するものとして、山谷詩漢文抄の一つである、彭叔守仙『山谷詩集注』における彭叔の説の傾向を論文化する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
名古屋大学文系経理課の事務補佐員として、平成30年度より雇用され、平日のみ閲覧可能の所蔵先もあって閲覧の予約が取れなかったため、想定以上に調査に赴くことができなかった。そのため、旅費が使いきれなかった。
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