本研究は、讃岐高松藩家老で曲亭馬琴の友人でもある木村黙老の文事をテーマとする。研究期間を通して黙老の文事の根本となる彼の蔵書について調査を行った。報告者は多和文庫所蔵『高松家老臣木村亘所蔵書籍目録残欠』を発見したことで、それを手掛かりに探索した結果、『梅桜日記』『消暑漫筆』『銅柱余録』『松蔭日記』『古今説海』などの書物が黙老の旧蔵書であると判明した。また黙老宛の書翰を調査し、以下のことが判明した。山崎美成と書物の貸し借りをしていたこと、江戸の出版事情について石塚豊芥子から情報を得ていたこと、小津桂窓に文人画の入手を依頼していたことなどである。以上により、様々な文人との繋がりも明らかになった。
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