本研究の目的は、平安朝の和歌序を注釈し、その特質と意義とを明らかにすることであった。和歌序とは、和歌制作の背景となる状況を記した短い文章である。和歌序は、漢文と和文(仮名文)の作品が残り、書序(一書の序)、宴集の序、定数歌の序に区分される。 本研究では、まず、宴集の和歌序が多く制作された場所で、序の表現の典故が継承されていることを明らかにした。また、和歌序は、奈良朝から平安朝にかけて、和歌と漢詩との関係が変化する過程を示す、重要な資料であることを指摘した。さらに、菅原文時、慶滋為政の序の特質を検討した。 加えて、著書『平安朝の序と詩歌―宴集文学攷―』(塙書房・2021年2月)を刊行した。
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