2020年度は、前年度に引き続き明治期の未翻刻の戦争劇の翻刻作業および、絵画・小説等の隣接領域における戦争表象に関する検討および資料収集をおこなった。最終年度であることから、これまでの研究成果を広く公表するため、国際学会における2件の研究発表(国際演劇学会International Federation for Theatre Reserchおよびヨーロッパ日本研究協会European Association for Japanese Studies)を予定していたが、新型コロナウイルス感染症の世界的な感染拡大にともないいずれも中止となった。研究発表を予定していた内容については、今後改めて論文等の形で公表を目指す。 また、2019年度までに翻刻を行なっていた作品および、2020年度に新たに翻刻した作品の計4作品(河竹黙阿弥作『明治年間東日記』を原作とする草双紙、三代目勝諺蔵作『日本大勝利』、竹柴其水作『会津産明治組重』、藤沢浅二郎作『壮絶/快絶 日清戦争』)に解説を付した『明治期戦争劇集成』を作成した。冊子版は研究機関、演劇および隣接領域の研究者への頒布を行い、「明治大学学術成果リポジトリ」においても電子版の無料公開を行なっている。これにより、これまでは読むことが難しかった戦争劇内容に対しては、多くの研究者から有益な感想や意見を得ており、今後の共同研究等への発展も期待できる。この他、ロームシアター京都における人形浄瑠璃文楽公演の公演パンフレットに、戦争劇研究の立場からエッセイを寄稿した。
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