本研究の目的は、明治期から戦後にかけて少年向けに書かれた娯楽小説について資料の調査、収集を行い、分析、考察を行うものである。 2020年度は具体的に、①資料調査とデータベース化、②マンガなど少年小説以外のメディアと少年小説との具体的な関わりについての研究、③2019年度までに実施した研究内容を公にすること、および研究活動のまとめとしてのシンポジウム形式の公開研究会の実施を予定していた。 しかし①については、マンチェスター大学での調査、小学館が所蔵する雑誌・書籍資料の調査の実施等を予定していたものの、COVID-19の影響でそれらを中止せざるを得ない状況になった。この他、東京都立多摩図書館、国立国会図書館国際子ども図書館、三康図書館等での調査も限定的にしか実施できなかったため、②に関わる学術論文執筆に必要な最低限の調査を、感染対策を取りながらできる限りの範囲で行うこととした。 また、③については、2019年度まで実施していた静岡大学図書館所蔵の貸本屋資料調査についてのシンポジウム形式の公開研究会の開催を予定していた。しかし、これについても開催が困難になり、オンラインでの開催等も検討したものの、研究期間内に実施することができなかった。 以上のことから、2020年度は、②で実施する予定だったこれまで複写等で収集を行ってきた資料群についての分析、考察と、学術論文の公刊準備に充てることとした。具体的には、少年向け娯楽小説とマンガを中心にした小説以外のメディアとの関係についての研究である。また、2019年度までに予定よりも早く調査・収集が進んでいたことから、本研究に少年小説におけるジェンダー編成のあり方についての研究を組み込む形で研究を進めた。これらの研究課題について、学術論文の執筆および公刊準備を行った。そのうち一編を、研究期間中に共著の中で学術論文として公刊することができた。
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