研究課題/領域番号 |
18K12302
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研究機関 | 比治山大学 |
研究代表者 |
小林 洋介 比治山大学, 現代文化学部, 講師 (00757297)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 戦間期 / モダニズム / 歌詞 / 流行歌 / 国民歌謡 / 散文詩 |
研究実績の概要 |
・研究課題を遂行するための基盤整備として、PC、レコードプレーヤー等の設備を購入し、比治山大学に設置した。 ・当初は2018年度に散文詩関連の調査を行い、2019年度に〈歌詞テクスト〉関連の調査を行う予定であったが、これを変更し、より大規模な調査を要する〈歌詞テクスト〉関連の調査を先行して行った。具体的には、NHKラヂオ・テキスト『国民歌謡』全78冊のうち74冊の実物の購入、『国民歌謡』のうち実物を入手できない号を複写するための調査出張等を遂行した。 ・上述の調査の成果として、単著学術論文、小林洋介「〈歌詞テクスト〉の戦前・戦中 ―NHKラヂオ・テキスト『国民歌謡』とその周辺―」(『日本文学研究ジャーナル』2018/3)を発表した。本論文では、1936年から1941年までNHKラジオで放送された番組「国民歌謡」、およびそれと並行して出版された小冊子『国民歌謡』を扱い、〈歌詞テクスト〉が詩と地続きであり文学の一部に位置づけることが可能であること、〈歌詞テクスト〉からは時代の思想的動向を抽出できること、〈歌詞テクスト〉における七五調定型の存続に着目するとき、従来の文学史を書き換えられる可能性があることを論証した。 ・散文詩については2019年度に研究成果を公表することとしたため、2018年度中の研究成果の公表はなかった。ただし、『文芸時評体系』等、散文詩研究のために必要な書籍の購入は2018年中から開始した。さらに、『青空』『ゲエ・ギムギガム・プルルル・ギムゲム』『薔薇・魔術・学説』といった戦間期の詩誌(詩の雑誌)(復刻版)を購入し、その内容に関する網羅的な調査を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
・当初は2018年度に散文詩関連の目録作成とウェブ公開を行い、2019年度に〈歌詞テクスト〉関連の目録作成とウェブ公開を行う予定であった。これを変更し、2018年度に〈歌詞テクスト〉関連の研究成果を発表した。その理由は、第一に、〈歌詞テクスト〉のほうが長期にわたる大規模な調査が必要であると判断したこと、第二に、2018年度刊行の雑誌『日本文学研究ジャーナル』から原稿依頼があり、それが〈歌詞テクスト〉関連の論文を発表するための絶好の機会であったことである。これに伴い、当初2018年度中に予定していた散文詩関連の調査は遅れている。ただし、この場合の予定の変更は順序の変更であるので、研究課題全体はおおむね順調に進展していると言える。 ・当初予定していたデータ公開は実施できなかった。主な理由は、当初2018年度中には予定していなかった論文の刊行を実施し、データ公開のための時間が確保できなかったためである。
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今後の研究の推進方策 |
・〈歌詞テクスト〉については引き続き調査を行う。その成果の公表手段として、国際学会 EAJS(European Association of Japanese Studies)の大会、EAJS Conferences in Japan(2019/9、筑波大)での口頭発表を行う予定である(応募済、審査中)。なお、2018年度に行った調査の結果、戦間期のレコードの発行年月について正確な情報を得ることが困難であることが判明した。そこで、当初2019年度中の公開を予定していた〈歌詞テクスト〉の目録については、それを作成することの是非を含め、改めて検討する。
・散文詩については、特に雑誌『詩と詩論』と作家・梶井基次郎に着目し、「詩」または「散文詩」として発表されたテクストの目録作成とウェブ公開に着手する予定である。なお、その目録を分析した成果としての論文の公表は、当初計画どおり、2020年度に行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究を遂行する過程で、次年度以降に本研究課題に関連して国際学会への出席が必要になる可能性が生じた。その場合、当初の計画にはなかった海外旅費の支出が発生することになる。そこで、その費用を捻出するため、本研究課題にかかる支出の一部を学内研究費で賄うなどの方法により、意図的に2018年度支出を圧縮し、次年度使用額を生じさせることとした。したがって、次年度使用額が生じた理由は研究の遅延ではない。
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