戦前・戦中期の日本語歌詞を文学テクストとして扱い、その創作・流通・享受のありようを調査・分析した。2020年10月31日にはNHK放送博物館に出張し、NHKラジオ番組「国民歌謡」で放送された歌曲に関する資料を閲覧した。 その成果を、昭和文学会第67回研究集会(2020年12月19日、オンライン)における単独発表「「紀元二千六百年」奉祝事業と〈歌詞テクスト〉―拡声装置としての〈国民〉の身体―」において公表した。これは、いわゆる「紀元二千六百年」奉祝事業(1940年)の一環として制作された「国民奉祝歌 紀元二千六百年」および「紀元二千六百年頌歌」の2つの歌曲の歌詞について、古事記や日本書紀に由来する語句を多用することによって何を表出したのか、また、歌詞が公募されたことにはどのような意味があったのか、といった問いに対する答えを明らかにしたものである。この口頭発表の内容はまだ活字化していないが、今後学術論文として公表する予定である。 新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、国会図書館、NHK放送博物館、日本近代音楽館等への調査出張が思うように実施できず、当初計画していた研究成果が得られたとは言い難い。しかし、図書や資料を購入するなどの方法により、当初計画とはやや異なるものではあるが、十分な研究成果が得られたと考えている。
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