研究課題/領域番号 |
18K12307
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研究機関 | 盛岡大学 |
研究代表者 |
紅林 健志 盛岡大学, 文学部, 准教授 (10817654)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 仮作軍記 |
研究実績の概要 |
本研究は『大友真鳥実記』など仮作軍記と呼ばれる作品群の文学史的な位置づけを探るものである。第5年度にあたる本年は次の点を明らかにした。 従来、畠山泰全『大友真鳥実記』(元文2年〈1737〉刊)は『難波土産』(元文3年〈1738〉刊)や森島中良『反古籠』の記述から、竹田出雲『大内裏大友真鳥』(享保11年〈1726〉初演)に先行する作品と考えられてきた。しかし、『大内裏大友真鳥』が『大友真鳥実記』を参照したといえるほどの、内容の一致は見られない。登場人名なども厳密には一致していない。また『難波土産』の記述も『大内裏大友真鳥』の参考文献を紹介したもので、『大内裏大友真鳥』の成立に『大友真鳥実記』が関与したことを述べるものではない。『反古籠』の記述も穂積以貫が『大内裏大友真鳥』の成立に関わったことをいうのみで、『大友真鳥実記』には触れていない。穂積以貫が『大友真鳥実記』の成立に関与した可能性は否定しないが、『大友真鳥実記』が『大内裏大友真鳥』に影響を与えたことをいうには『反古籠』の記述は不十分である。『大友真鳥実記』序の、著者畠山大全の未完成の原稿を死後に補訂したとの記述を信じるのであれば、『大友真鳥実記』は『大内裏大友真鳥』の後に成立した可能性が高い。 『大友真鳥実記』は『大内裏大友真鳥』以前に成立したとされてきたために文学史的な位置づけを曖昧にせざるを得なかった。上述の成果により、『大友真鳥実記』の文学史的な位置づけが、よりいっそう明確になるものと考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
新型コロナウィルスによる感染症拡大防止対策のため、他県への移動や、資料の閲覧に制限があったため、文献調査が思うように行えなかった。これまではコロナウィルスによる感染症流行以前に集めた資料や、デジタル公開されている資料をもとに考察をすすめてきたが、やはり文献調査ができず進まなかった課題が残ってしまった。
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今後の研究の推進方策 |
仮作軍記の成立背景および、内容、さらに文学史への影響について、ここ数年行うことができなかった文献調査を実施して不足していた部分を補い、全体をまとめたい。また、翻刻を含む報告書を完成させる。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症のため、図書館等の利用に制限があったため、本務との兼ね合いから、十分な調査が行えなかったためである。文献調査と、報告書の作成に使用する予定である。
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