本研究では、六朝期以前に成立した賦(中国に主に見られる長編の韻文を指す)に対する注釈の中でも、特に次の二種類を対象とした。第一に主に後漢期に活動した班固の「幽通賦」に対する彼の妹である曹大家の注釈であり、第二に北魏時期に活動した張淵の「観象賦」に対する彼自身による注釈である。 前者については、注釈活動を通じて曹大家による兄の班固への接近を確認することができ、同時に彼女自身の創作活動へも反映されていることを確認した。後者については、「観象(天文観察)」という主題が作者である張淵にとって最も適したものであり、注釈にも天文に関する自らの知識と為政者による「観象」の重要性を主張していることを確認した。
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