本研究では、教育・出版メディア・文学形式という多角的視座を導入し、日中の新文学時期にそろって出現した小品文を対象に調査・分析を行い、中国文学の流れを再検討する。本研究は、大正日本で出現し流行した文学形式のひとつである「小品文」が、日本留学経験を持つ知識人によって中国に持ち込まれ、多様な領域で活用されたという発見を端緒としている。 日本小品文は出現当初、言文一致運動の最中にあって学生の習作を意味した。国語教育や投稿雑誌、文章指南書の流行によって小品文は若年層を中心に浸透し、運動とともに自然消滅した。 中国では1920年代に国内に持ち込まれて以降、日本と同様の経路で流行した後、多様な領域において中華民国期に活用され続けた。 日中新文学の特徴について、小品文出現以前と以降に着目してその連続性や断絶を視野に読み解く。主に扱う文字テキストは次の通り。1)国語(国文)教科書、2)近代教育が導入された1920年代から中国建国までに刊行された投稿雑誌や新聞、以上である。本研究では主に、中国において1、2の収集を行い、数量や内容について分析を行う。
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