研究課題/領域番号 |
18K12312
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
岩田 和子 法政大学, 法学部, 教授 (90581819)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 四川説唱本 / 湖南説唱本 / 唱本 / 曲本 |
研究実績の概要 |
令和2年度は、昨年度のカンファレンスで発表予定であった研究内容を更に深化させ、その成果を論文にまとめ発表した(岩田和子「神原文庫所蔵清末四川説唱本の興順堂刊本について」『中國文學研究』第46期、早稻田大學中國文學会、2020年12月25日)。中国国内外の機関に所蔵される清末四川説唱本のなかでも特に現存数が少ないとされる道光・咸豊・同治年間のテキストが、神原文庫には18種あることを確認し、そのうち神原文庫にのみ現存すると思しい稀見資料の一部すなわち同治年間に劉興順によって興順堂から創作・出版された説唱作品八種と関連作品二種を研究対象として取り上げた。各種テキストの書誌調査、作品の概要紹介・内容分析を通して成書について考察すると共に、光緒期以前の四川の民間書肆における説唱本創作・出版活動の状況や、周辺地域の通俗文芸との関わりについて検証した。興順堂から出版された各種作品は、通俗文芸では定番のプロットを軸に量産されたこと、四川を中心に湖南、貴州、雲南等の周辺地域で地方劇や説唱など各種媒体でも流布し、人口に膾炙した物語『滴血珠』『八仙図』『藍橋汲水』の影響を大きく受け、創作に採り入れていたこと、また独創的な王嬌鸞故事『雙上墳』を編み、四川を中心に新たな流行を築いたこと、そのほか物語本編の前後に興順堂の新作や関連作の宣伝文を挿入し、読者の購買意欲を高める工夫を講じていたこと等が明らかとなった。以上のような書肆による創作・出版の姿勢は、四川だけでなく当時の湖南説唱本においても見られ、内陸地域で共有・形成された出版文化であったことを改めて確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
神原文庫所蔵清末四川説唱本の各作品の提要を作成する作業が予定よりも遅れているため。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度は、引きつづき清末四川説唱本の中でも神原文庫のみに所蔵される稀見資料をとりあげて分析し、従来の四川説唱本研究を補完するとともに、各作品の提要を作成し、国内外に発表していくことを予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19の影響により、予定していた中国での実地調査ができなかったため。
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