研究課題/領域番号 |
18K12313
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
池田 智恵 関西大学, 文学部, 准教授 (60580959)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 通俗小説 / 中国文学 |
研究実績の概要 |
2018年度は、1940年代から50年代の中国における通俗小説の変遷について、まず大きな問題意識の確認のために、七月に日本における中国・台湾の近現代通俗小説を研究している研究者及び、台湾大学において、近代台湾の通俗小説の研究をされている黄美娥先生や他の研究者など総勢13名を招聘し「日台若手研究者会議ー近現代中国・台湾における通俗小説と通俗文化研究」と題して関西大学でシンポジウムを行った。この会において、1940年代から50年代にかけて、それまで中国大陸で発展して来た近代通俗小説が大陸でも40年代後半に大きく変化し、かつ50年代には台湾に渡って独自の変化を遂げて行くことが確認され、通俗小説や通俗文化の伝播から、当時の文化の変容を探る重要性があらためて認識された。筆者も、「上海淪陷期雑誌与其読者―以《紫羅蘭》為例」のタイトルで研究発表を行い、1940年代における読者の感性の変化について『紫羅蘭』という雑誌を中心に、当時の若者たちがいかに自分の苦境を小説として作品化していくかを発表した。またこの研究発表の内容は、論文(「若者たちの虚ろな現実:雑誌『紫羅蘭』から見る淪陷期上海の雑誌と読者」)として執筆を終了し、中国モダニズム研究会が今年度中に発行予定の論文集に収録される予定である。 夏季には、中国の上海図書館にて1940年代後半の雑誌についてほぼ資料調査を完了した。資料調査の中で明らかになって来たのは、1940年代後半の上海における通俗小説の変容のキーワードが「家族」と「内幕」というものであることだ。これは資料をより読みこまなくてはならないが、1940年代後半において、戦乱などでバラバラになった家族の再編、また混迷する政治状況などにおいて、一体何が真実なのか、様々な事象の「内幕」を探る想像力が発展したのではと考えている。これに関しては、2019年度に研究発表を行っていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
7月のシンポジウム開催のために4月より準備などを全て筆者が行わなければならなかったため、前期に研究時間が十分に取れなかった。現在、科研の成果の一部として1940年代までの探偵小説についての書籍を執筆中であり、その原稿を進めながら行っているため、1940年代後半の新しい部分に関しての研究に遅れが生じている。その上、個人的な理由であるが、現在2歳と4歳の子供の子育てをしており、急な病気などで保育園に行けないなどの場合、研究時間が削られることとなり、夏季の調査の後、資料の読み込みや論文執筆について遅れが生じた。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、2018年度の資料調査したものを論文として発表できるように進めていく。論文二本を予定しており、それを執筆すれば、上海における1940年代から50年代への接続の問題がかなり明らかになるだろう。 この論文の執筆状況によるが、夏に青島に赴いて、研究計画書の予定通り、1940年代の他の地域の他のジャンルの変遷、武侠小説という中国最大の通俗小説ジャンルに関する予備調査を行う。当時の新聞を調査するため、所蔵の確認や閲覧の手順などを現地で確認するためである。予備調査を受けた上で、冬に本格的な調査を行う予定である。またこれらの調査の結果については2020年度に論文などで発表していくようにする。
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