研究課題/領域番号 |
18K12313
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
池田 智恵 関西大学, 文学部, 准教授 (60580959)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 上海 / 通俗小説 / 言情小説 / 中国 |
研究実績の概要 |
2018年度に上海の調査の大部分が終了したため、2019年度8月に北京の国家図書館に赴き、『青島新民報』の予備調査を三日間行った。『青島新民報』は、山東省でも国際空港のある青島市の図書館よりも煙台市にある図書館の方が所蔵が多くあることが判明した。そのため、山東省に赴くよりも北京国家図書館にも所蔵が確認できたため、北京国家図書館で予備調査を行い、1940年代の『青島新民報』に曜日によって異なる読者投稿欄があることを突き止めた。 また、2019年9月に上海の上海図書館において補完調査を行った。特に1940年代後半における雑誌、『伉儷』について研究発表、論文執筆のための調査を行なった。調査の結果、戦乱で混乱し、家族が離散した人々が多くいた中で、特に家族関係に関連する読者投稿を募り、またそれと関連する小説を掲載新たなる家族像を示していたこと、またそれが戦後の上海における通俗小説、特に恋愛小説(言情小説)の発展に影響を与えているのではないかと明らかにした。これによって1940年代後半における、雑誌と読者が形成したある種の家族に関連する想像力が、通俗小説の変化に具体的に作用していることが明らかになるだろう。 これは、研究発表の成果として2019年度中に発表の予定であったが、covid-19の影響により研究会が中止となっており、2020年度に研究発表・公刊を目指している。また、日中戦争化における上海の雑誌と読者についての論文を執筆したが、公刊が延びており、2020年度中には発行される予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2019年度は、研究者が勤務する専修において、病気療養のため休業者が春学期に出たため、そのための授業負担や卒業論文指導などの教育業務が増えた。かつ、関西大学において10月に行われる予定であった(当日に台風のため中止となった)日本中国文学会全国大会において会計業務を負担することで学会事務が増え、また2019年春より中国文芸研究会の研究誌の編集委員として、二誌の編纂に関わることとなった。(現在も関わっている)どれも比較的若い専任教員がいないため、順番に回ってくるものであり、研究者が自分の時間をうまく割いて研究活動をすべきであるが、家では五歳児と三歳児の養育もしなければならず、体力的に限界であった。 加えて、COVID-19の流行により、1月から3月に予定していた研究調査も行えなくなったため、論文の補完調査を行うことができず、発表したい論文も現在保留中である。この調査もいついけるか現在のところ不明であり、今後も研究は遅れてしまうと考えている。2020年度も6月に台湾大学との共同シンポジウムを予定していたが、上述のCOVID-19の状況により、現在キャンセルとなっており、来年度の開催となる予定である。また2019年3月の中国文芸研究会において研究発表を行う予定であったが、これもキャンセルとなっており、研究成果を十分に発表することができなかった。 以上の理由から本人の外的・内的要因において、研究遂行の時間及び体力が足りなかった点、また調査が行えないことによって研究状況が大変遅れていると言える。
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今後の研究の推進方策 |
COVID-19による影響を考えると、いつ中国に渡航が可能でどこまで調査できるのか、ということが不透明である。COVID-19の第二波、第三波という状況を考えると、科研費の期間内に(延長したとしても)中国に渡航が不可能である、と考えた方が良いかもしれず、それを考えると山東省の青島を中心とした新聞の調査はできない可能性が高い。また調査ができたとしても、おそらく研究成果として発表・執筆まで至らないのではないかと危惧している。 そのため、現在のところすでに調査を終えている、上海の資料をもとに、1940年代後半の上海の通俗小説の変遷についてより深く考えていった方が良いのではないかと考える。 今後は、現在ある資料と、現在執筆中の論文の内容をあらためてより深く上海において、通俗小説、特に言情小説が変化していったかについて考えていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
covid-19の影響により、1月から3月までに予定していた調査を行うことができなかったため。 今年度に可能であれば、研究調査・台湾との国際シンポジウムを行いたい。
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