研究課題/領域番号 |
18K12313
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
池田 智恵 関西大学, 文学部, 准教授 (60580959)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 上海 / 通俗小説 / 投稿欄 / 読者 |
研究実績の概要 |
1940年代における中国の通俗小説の変遷を明らかにするために、上海の状況を明らかにし、2020年度からは北京の中国国家図書館において、山東省の状況を調べる予定であったが、新型コロナウィルスによっての緊急事態宣言発出、また海外渡航が不可能になったこと、かつオンライン授業対応の混乱などで、台湾との交流シンポも不可能となった。そのため大きく研究状況が遅れることとなった。 その中で、上海の状況について、今までの調査結果をまとめることと、日本における研究会の雑誌の中で通俗小説に関する特集を組み、日本における中国に関連する通俗小説の研究状況についてまとめることに方向転換した。 論文としては、三編を発表し、国内の研究会で一回研究発表を行い、中国文芸研究会の雑誌『野草』の105号の編集担当者として、「特集・近現代通俗小説」を組んで国内における関係の研究をまとめた。 以上の研究成果から、1940年代における、上海の通俗小説の状況の一端として、1940年代前半には、投稿などのシステムから学生などの若者を中心とした書き手の中から出現した「東呉系」を中心とした作家について分析を行い、自分たちの直面している現実を描く際にそれらを直視しないという統一した描き方をしていることを指摘した。そしてそれが1940年代後半においては、厳しい現実を生き抜く人々を応援するような投稿欄が雑誌において作られ、その中で、読者の人生の組み立て直すような試みがされていることがわかった。戦乱によって全てを無くした女性が、まずは投稿者として出現し、そして彼女が人生相談の相談役となっていくのである。雑誌という媒体の中で人々が様々な想像力を駆使し、現実に向き合い、寄り添いながら生きていこうとしていることが見えてきた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
新型コロナウイルスによる緊急事態宣言発出によって、家庭保育とオンライン授業を余儀なくされ、4月から9月にはその対応に追われた。また10月以降も、対面授業実施ではあったが、例年のようにはいかず、研究時間が大幅に削減された。 また渡航制限が行われ、事実上国内・国外出張が不可能となり、調査が全く行えない、また思うように研究発表もできなくなった。 以上のことから研究を進めること、またそれを発表することが大変難しくなり、研究状況が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
今後も渡航制限・国内移動制限は続き、かつ現在緊急事態制限が発出されている。オンライン授業に切り替わっている上、家庭内保育の状態であり、今年も大幅に研究が遅れることが予想される。 残念ではあるが、山東省の新聞に関する調査は今年は諦め、去年までに収集してきた上海の資料をもとに、恋愛や家庭を題材として1940年代に流行した小説を分析し、読者がどのようにそれらを楽しんでいたのかを明らかにする。また、黒幕小説や探偵小説に関しても手元の資料を精査・分析し、上海における発展について明らかにする。 また今年度の後半に台湾とのオンラインのミニシンポを開き、交流を持つ予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
資料調査が行えなかったために、予算が消化できなかった。これに関しては、資料のマイクロフィルム購入などをすることによって、資料調査の代替としたい。
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