1890年代から1920年代にかけてのアイルランドでは、「文芸復興」と呼ばれる豊穣な文学運動が開花した。本研究の目的は、この運動がジェイムズ・ジョイスに与えた影響を明らかにするものであった。ジョイスは自国の狭隘な自民族中心主義の文学に反発し、大陸のモダニズムの運動に共鳴したとされるが、その文学観の基礎は同時代のアイルランドで培われたはずである。国家をめぐる女性表象の脱神話化を中心に、文芸復興運動とジョイスの具体的な関りを論じた。そのためW. B. イェイツ、J. M. シング、レイディ・グレゴリーを中心に、ジェイムズ・ジョイスの連動を探り、対立というこれまでの通説を覆すことができた。
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