研究課題/領域番号 |
18K12325
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研究機関 | 白百合女子大学 |
研究代表者 |
米田 ローレンス正和 白百合女子大学, 文学部, 講師 (40748266)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | パーシー・シェリー(Percy Shelley) / ロマン主義(Romanticism) / 歴史化(historicisation) / 身体性(physicality) / 超越(transcendentalism) / 経験(empiricism) |
研究実績の概要 |
交付申請時に提示した計画の通り、イギリス・ロマン主義の男性詩人、パーシー・シェリー(Percy Shelley, 1792-1822)に関する研究を行った。およそ二百年に及ぶ批評的営為の結果、「超越主義者(transcendentalist)」と「経験主義者(empiricist)」という相反するシェリー像が構築された。これら二つの解釈を有機的に統合することが本研究の目的であった。 前年度(平成三十年度)は、イタリア期のシェリーにおいては「超越」よりも「経験」の方が優位であることを明らかにした。今年度(令和元年度)は、この「経験主義者」としてのシェリーが自己の古代ギリシア観を相対化していく過程に注目した。 第一に、ポンペイを含む、イタリアの古代遺跡が、シェリーのギリシアをプラトン的イデアから歴史的国家へと変容させた。この歴史化されたギリシアは、文化的他者としての「南(the South)」に属していたのである。第二に、カトリック典礼の異質性がシェリーの道徳観をプロテスタント化した。同時に、現代イタリア人のみならず、古代ギリシア人をも含む「南」の住人達は、宗教的他者としての「異教徒(the Pagans)」へと変身したのである。 このように、シェリーはイタリア旅行を通じて自己の超越的ギリシア観を経験化することに成功した。実に、イタリア期のシェリーにおいては「超越」よりも「経験」の方が優位であることの証左となっている。次年度(令和二年度)においても、「経験主義者」としてのシェリーの本質を詳細に分析する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本助成金を使用して購入した研究資料から有益なデータが得られた。しかし、申請時の想定を上回る時間をシェリーの「経験」に費やす必要が生じたため、「超越」の分析に着手することが遅れてしまっている。
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今後の研究の推進方策 |
上述の通り、「経験」の問題を可能な限り早く解決し、「超越」の分析に着手することが次年度の課題である。
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次年度使用額が生じた理由 |
想定を上回る量の研究資料を購入する必要が生じたため、「前倒し支払請求」を行ったが、その全額までは使用せずに目的を果たしたからである。
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