研究課題/領域番号 |
18K12327
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研究機関 | 実践女子大学 |
研究代表者 |
諏訪 友亮 実践女子大学, 文学部, 講師 (30633408)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | イェイツ / アイルランド文学 / アイルランド自由国 / 国民国家 / ファシズム / セクシュアリティー / 同性愛 |
研究実績の概要 |
1920年代から30年代にかけてアイルランドの作家たちが示した国民像についての当該研究を継続している。1922年に成立したアイルランド自由国成立以後、国家による道徳規範の統制が強まる中、特にW・B・イェイツを中心にした緩やかな作家の連帯から柔軟な国民のイメージが提出されたことを議論している。 イェイツが1920年代のイタリア・ファシズムに共感をしていたことはよく知られており、今年度はイタリア・ファシズムのアイルランド版である青シャツ隊についての研究を進めた。1920年代に政権与党だったクマン・ナ・ゲールの戦闘部隊としても機能していた青シャツ隊(The Blueshirts)が、当時のヨーロッパのファシズムと比較し、どの点で類似性が見いだせるのかについて2022年度中に研究をまとめる予定である。 また、今年度は近代アイルランドにおけるセクシュアリティーについても触れ、同性愛裁判によってイギリスで裁かれたアイルランド出身の作家オスカー・ワイルドに対するイェイツの擁護を取り上げた。イェイツはイギリスの中で疎外されるアイルランドの芸術家としてワイルドを評価し、彼の同性愛的傾向を許容する姿勢を示している。このことから、異性愛的な家族観が理想化され、同性愛がタブーとなっていた20世紀前半のアイルランドにおいて、イェイツの提示したアイリッシュネスは、セクシュアリティーの面でも解放的であったことが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナの影響により、海外渡航はもちろんのこと、国内の他大学図書館も利用できず、そのためデータベースへのアクセスも限られていた。2022年度は他大学図書館利用の再開が始まっているため、この機会に遅れを取り戻したい。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度中にこれまでの研究成果の一部を論文としてまとめ、本研究課題のテーマであるアイルランドにおけるファシズムと自由主義の関係を考察する。
本研究課題とは関係のない発表の依頼などもあるが、そうした発表準備の合間を縫って課題の遂行を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
学会などが全てオンラインで開催され、本来計上するはずだった旅費などの支出が全くなかった。 本年度からは学会も一部対面が再開される見込みであり、旅費や関連書籍の購入などの物品費として使用する計画である。
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