研究実績の概要 |
2021年度の研究計画に沿って、以下の3点を中心に進めた。 1)すでに出版が決定していたナボコフの『絶望』(Despair)に関する論文“The Blindness of the Writer in Nabokov’s Despair”の出版準備作業を進めた。出版先のJournal of Modern Literature(米国 インディアナ大学)の編集者との校正作業を繰り返し、最終的に令和3年12月末に出版に至った。 2)フランスの社会学者・批評家ジャン・ボードリヤールの著作を網羅的に検証した。ハイパー・リアリティの概念についての理解を深めるとともに、イメージ、メディア論、写真論、アメリカに関する分析など、ボードリヤールの社会文化論を整理することで、文学テクストを新たな視点で読み直す視座を得ることができた。 3)J.D.サリンジャーの短編集Nine Stories、トルーマン・カポーティの1940年代の短編やニューヨークを舞台とした作品を中心に精読しながら、写真という視覚芸術と20世紀中葉のアメリカ文学作品の考察を進めた。上記のボードリヤール以外にも、ロラン・バルト(Roland Barthes, Camera Lucida: Reflections on Photography, trans. Richard Howard. New York: Hill and Wang, 2010)やスーザン・ソンダクの議論(Susan Sontag, On Photography. New York: Farrar, Straus and Giroux, 1977)を理論的支柱として作品分析を進めた。その結果としてカポーティと写真に関して、新たな論文の構想を見出すことができた。
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