本研究では、チャールズ・ディケンズの作品に描かれる眠り(あるいは夢)の描写を分析し、各作品におけるそれらの描写の多様な役割を明らかにした。具体的には、中期『マーティン・チャズルウィット』において、殺人者のジョーナスと被害者のティッグとの関連を示唆するものとして両者の夢が、中後期の『荒涼館』において、バケット警部の人間性とその限界を示唆するものとして眠りの描写が、そして後期の『大いなる遺産』において、主人公ピップの成長と、見果てぬ夢からの解放を示すものとして、眠っているときに見る夢の描写が、それぞれ巧みに用いられていることを明らかにし、研究発表や雑誌論文、図書といった形でその成果を公表した。
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