研究課題/領域番号 |
18K12339
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
前之園 望 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 助教 (20784375)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | アンドレ・ブルトン / シュルレアリスム / ポエム=オブジェ / フランス20世紀詩 / プロジェクションマッピング |
研究実績の概要 |
本研究はアンドレ・ブルトンによるポエム=オブジェ作品に固有の詩学とその射程を明らかにすることを目的とする。したがって、まずはブルトンにおける詩法の特性とオブジェ観をそれぞれ明らかにする必要があった。本年度は、ブルトンの詩法に関する研究としては発表「シラサギが飛び立つまで――アンドレ・ブルトンにおける《aigrette》」(慶應義塾大学教養研究センター後援シンポジウム「鳥たちのフランス文学」、慶應義塾大学、2018年11月25日)を行い、ブルトンの詩作品の分析には彼の詩法の変遷への目配りが不可欠であることを明らかにした。また、ブルトンのオブジェ観を間接的に探る研究として、シュルレアリスムの造形芸術の問題系を取り上げた以下の発表を行った。「ジャック・エロルドと透明な巨人」(シュルレアリスム美術を考える会、第2回ワークショップ「シュルレアリスム美術を読む」、成城大学、2019年3月6日)。ポエム=オブジェそのものの研究としては、昨年度日本フランス語フランス文学会で口頭発表した内容をブラッシュアップした論文「潜在的現実の現働化――アンドレ・ブルトンにおけるポエム = オブジェの詩学」(『フランス語フランス文学研究』第113号、日本フランス語フランス文学会、2018年8月、445-459頁)を発表した。また国際シンポジウム「詩人たちの映画」で以下の発表を行い、ポエム=オブジェの詩学とプロジェクションマッピングの比較を行った。「La poetique du mapping video verbal: le cas d’Arcane 17 d’Andre Breton」(東京大学フランス語フランス文学研究室、国際シンポジウム「Le Cinema des Poetes 」、東京大学、2018年12月15日)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ブルトンにおけるポエム=オブジェの実践がブルトン独自の詩的描写を前提とするものであるという本研究の軸となる仮説を実証的に論じることができ、初年度としてはおおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
ブルトンの制作した造形作品の写真を集めた『私は見る、私は想像する』を主なコーパスとして、ポエム=オブジェのデータベースを作成する。また、本研究の主要な目的のひとつが、ポエム=オブジェをブルトンの詩法の変遷の中に位置づけ、ブルトンの詩学を総合的に解き明かすことであるが、その基礎作業として、ポエム=オブジェ作品が集中して制作される1930年代半ばから1940年代前半の期間の、前後の時期のブルトンの詩法の変遷の俯瞰的再検討を行う。
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