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2021 年度 実績報告書

現代ドイツ語圏文学における事実と虚構―A.シュミットとC.J.ゼッツを比較して

研究課題

研究課題/領域番号 18K12343
研究機関東京都立大学

研究代表者

犬飼 彩乃  東京都立大学, 人文科学研究科, 助教 (70622455)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2022-03-31
キーワードドイツ文学 / オートフィクション / ポストモダニズム / 現代文学 / フェイク / デジタル文学
研究実績の概要

プロジェクトの最終年度としての本年度の成果としてもっとも大きいものは、オーストリアの作家クレメンス・J・ゼッツを迎え、ゲーテ・インスティトゥート東京、国際文化交流事業財団と共同でオンライン国際ワークショップ「クレメンス・J・ゼッツ―ポストヒューマニズムの文学」を開催したことである。6名の研究者によるゼッツ作品の解明に加えて、作家本人にもポストヒューマニズムに関する講演を依頼し、視聴者からの質問にも長く答えてもらった。各作品が文学や哲学に深く根ざしながらもテクノロジーにも親和性があることの背景に、ポストヒューマニズム思想があるのではないかという仮定から始まったワークショップだったが、作家は本テーマについて深く研究しているだけでなく、非常に身近な現実の問題としてとらえていることが改めて示された。
クレメンス・J・ゼッツ初の邦訳書『インディゴ』が本研究者の訳で刊行されたこともあり、本作で特徴的な本文以外の部分、パラテクストにおける実験についても学会で発表した。パラテクストはゼッツの作品では書籍の販売に必要な書誌情報表示の役割だけでなく、ひとつの実験として作品の枠組みを規定しなおすために効果的に使われ、本の外側である現実と本の中にある虚構の世界の境界線を意識的に操作していることが、年代を通じて各作品で確認することができた。
この現実と虚構の境界についてはさらにゼッツの講演「ケーフェイと文学」によってポストモダン文学とのかかわりの中から記録されうることも学会発表した。虚構の齟齬が暴露される瞬間を示すプロレス用語「ケーフェイ」を、作家は演劇における「第四の壁」と比較することで、ゼッツは現実においていたるところで見つかる虚構とその破綻を指摘し、マーケティングや政治の世界における文学の重要性を説いている。
これらの口頭発表の内容については学会誌にて論文として順次発表する予定である。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2022 2021 その他

すべて 雑誌論文 (1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件) 図書 (1件) 備考 (2件) 学会・シンポジウム開催 (1件)

  • [雑誌論文] 父親不在の父子関係ークレメンス・J・ゼッツ『息子らと惑星たち』考2022

    • 著者名/発表者名
      犬飼彩乃
    • 雑誌名

      人文学報

      巻: 518-14 ページ: 31-42

  • [学会発表] クレメンス・J・ゼッツ『インディゴ』にみる世界の限界とフィクションの可能性2021

    • 著者名/発表者名
      犬飼彩乃
    • 学会等名
      オンライン国際ワークショップ クレメンス・J・ゼッツ―ポストヒューマニズムの文学
    • 国際学会
  • [学会発表] 書籍のフレーミング効果を考える―クレメンス・J・ゼッツ作品のパラテクストの役割2021

    • 著者名/発表者名
      犬飼彩乃
    • 学会等名
      第76回ドイツ現代文学ゼミナール
  • [学会発表] クレメンス・J・ゼッツ『ケーフェイと文学』からみるポスト真実時代の第四の壁2021

    • 著者名/発表者名
      犬飼彩乃
    • 学会等名
      日本独文学会春季研究発表会
    • 国際学会
  • [図書] インディゴ2021

    • 著者名/発表者名
      クレメンス・J・ゼッツ、犬飼彩乃
    • 総ページ数
      568
    • 出版者
      国書刊行会
    • ISBN
      978-4-336-07089-0
  • [備考] クレメンス・J・ゼッツ『インディゴ』訳本制作騒動記

    • URL

      https://www.jgg.jp/pluginfile.php/310/mod_folder/intro/0182.pdf

  • [備考] [終了]2021年度国際オンライン・ワークショップのお知らせ

    • URL

      https://www.comp.tmu.ac.jp/dokubun1/clemens_setz_2021.html

  • [学会・シンポジウム開催] オンライン国際ワークショップ クレメンス・J・ゼッツ―ポストヒューマニズムの文学2021

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公開日: 2022-12-28  

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