本年度の一番大きな実績は、当初に予定していた最終年度の計画通り、作家を招聘しての講演会を実現できたことであった。 現代メキシコ北部文学を代表するエドゥアルド・アントニオ・パラとダビー・トスカーナを招いて東京で二回、京都で一回行うことができた。メキシコ・アメリカ国境における暴力が文学作品でどのように表象されているか、またメキシコ文学の古典とも言えるフアン・ルルフォと現代作家たちの関係について等語っていただいた。メキシコ北部の歴史特殊性や組織犯罪や人権侵害などの現代の問題、それを文学が報道とは異なる形で現実を描く様を知ることができた。また、メキシコ北部地域がメキシコ文学にとって重要な人物を輩出してきたことも確認できた。講演会の参加者には学生や一般の方々、研究者やジャーナリスト、キュレーターの方などがおり幅広い方に興味を持っていただくことができた。 招聘中の個人的なインタビューによって、パラとトスカーナの作家としてのスタートや作品の構想の仕方、現在の作家が置かれている状況や出版状況などを知ることができた。 研究期間全体については、パラとトスカーナについては論文を発表することができ、彼らが代表するメキシコ北部文学のある程度のパノラマをかなり明らかにすることができた。また、研究を進める中で、申請書を記入した時点では知らなかった作家についても情報を得ることができ、メキシコ北部文学の豊かさや暴力の表象や女性作家といった今後の研究テーマを得ることができた。 メキシコ北部という特定の場所が創作に与えるインスピレーション、そこから発展して創作における場所の重要性についてあらためて確認した。また文学作品と現実の関係等についても考察することができた。
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