研究課題
本研究は新型コロナウイルスの世界的流行による延長を経たため、申請時の年度計画を一部変更しつつ実施された。最終年度にあたる2023年度には、当初の研究計画を継承・発展させるため、1.研究全体を補完する研究資料の収集と分析、2.研究成果をまとめ発表することを模索する、という二点を軸に研究を実施した。上記1に関しては、本年度においてようやく海外渡航の制限が十分に緩和されたため、これまでの研究にさらなる広がりをもたらすことを主眼として、主にカブレラ・インファンテ関連資料のためイギリスへ、また亡命キューバ作家の出版や受容に関わる広い背景資料のためスペインへ出張をおこない、貴重な資料の収集や分析をおこなうことができた。また上記2に関しては、今後も継続して成果発表を目指すことになるものの、最終年度においては特に、国際共著論文集を編者として出版でき、その中でカブレラ・インファンテについての論文を世界的に発信できたことが特筆すべき成果となった。また、本研究と同じディアスポラ状況を扱うメキシコ現代小説の翻訳を上梓できたことも、世界文学的な視座を研究に取り込む上で重要な成果となった。研究期間全体を概観した場合、パンデミックの流行という未曽有の事態により研究計画の変更を迫られこそしたものの、必ずしも研究の停滞ばかりがもたらされたわけではなかったと言える。例えば、当初の予定には必ずしも含まれなかった、他地域との比較分析や共著編纂といった新規プロジェクト、論の基盤となる翻訳・文学理論の分野、亡命作家についての概論や実作品の翻訳など当初よりも広範な領域において成果を蓄積・発信できた点は、本研究の展開として肯定的に捉え得るだろう。こうした展開に基づき、「亡命」「移民」「翻訳」行為間の本源的関連を問い直す本研究の議論が、今後より広い時代と地域に即して敷衍されていくことが期待される。
書籍記事「レイナルド・アレナスと海 流れゆくさき」、『ラテンアメリカ文学を旅する57章』、明石書店、2024年刊行予定。書籍記事「コラム 「文学」と「亡命」:キューバ断章」、『ラテンアメリカ文学を旅する57章』、明石書店、2024年刊行予定。
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Finisterre II: Revisiting the Last Place on Earth. Migrations in Spanish and latin American Culture and Literature
巻: 1 ページ: 153-173
10.31244/9783830998433