研究課題/領域番号 |
18K12353
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研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
佐々木 悠介 東洋大学, 国際学部, 准教授 (20750730)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ヴィヴィアン・マイヤー / 写真 / キュレーション |
研究実績の概要 |
本年度は写真キュレーションの究極の事例として、作品(齣)の選択、公開がすべて没後に行われているアメリカの写真家ヴィヴィアン・マイヤー(1926-2009)を中心的に研究した。マイヤーの場合、生前に「作品」として公にされた写真は一枚もなく、すべて貸倉庫の賃料滞納で差し押さえられた「遺品」がオークションを通してコレクターたちの手にわたり、それが徐々に公開されるにつれて評価を得て、批評、研究でも取り上げられるようになったものである。したがって写真におけるキュレーションの重要性に注目する本研究にとっては、究極の事例として取り上げるべきものである。 本年度はまず、これまでに公刊された図版資料のほか、先行研究、批評を網羅的に収集、調査した。夏期休暇はこれらの文献調査に充てた。 没後にコレクターが入手したヴィンテージ・プリント(マイヤー自身が製作した物、マイヤー自身がラボに依頼して製作した物)の一部が本年夏にシカゴ大学に寄贈され、本年度秋より同大学図書館の特別コレクション・センターにて研究者への公開が始まった。このヴィンテージ・プリントは、マイヤー自身による齣の選択を知る唯一の手がかりであり、没後の急な評価を可能にしたキュレーションを相対的に検討するための貴重な材料でもある。そこで2月に同大学への出張資料調査を行い、現時点で公開されているヴィンテージ・プリントすべてを調査した。 この調査出張を行ったのが、大学の学期終了後であったため、現時点では成果の公表は行えていないが、今後、今回の調査結果に基づいて早急に成果の公表を行いたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本年度は勤務先の所属学科において、新カリキュラムの検討が行われ、そのための資料作りと議論に多大な時間と労力を費やさなければならなかった。 それに加えて、秋には学科の英語研修の引率(マレーシア)当番で、その期間中のみならず、前後の期間にも多大な負担を強いられた。 また前述のシカゴ出張調査から帰国した直後から、新型ウイルス流行に対応する授業準備等に多くの時間を必要とした。 これらの事情から、本年度は研究時間がきわめて限られ(不足して)おり、計画通りに進んでいるとは到底言い難い。
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今後の研究の推進方策 |
本年度のもっとも重要な資料調査(出張)を行えたのが二月下旬であることから、その結果をふまえた成果の公表が行えていないが、これをなるべく早い段階で行いたい。 これも含め、写真キュレーションの重要な事例については部分的な研究成果をいくらか蓄積できているが、これを全体としてまとめていくにあたり、当分は海外への出張をせずに調査を進めることを検討しなければならない可能性もあり、社会情勢を踏まえて今後の調査計画を再検討したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は前述の事由により研究時間が不足し、遂行が遅れていることもあるが、もともと2018年度から2019年度へ繰り越した額が少なくなかったことから、本年度単独で見れば、執行はおおむね予定通りである。 ただし2020年度に必要な国内、海外出張を行える社会情勢になるかわからないため、場合によっては今後、研究期間の延長(2021年度までの予定を、2022年度までに)も検討したい。
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