本研究では、英語圏カリブ海諸島出身の(旧)植民者によって書かれた文学と朝鮮半島出身の(旧)植民者によって書かれた文学を比較越境的に検証した。その際、「白人クレオール」(新大陸で生まれた育ったヨーロッパ人/白人を意味する)の作家ジーン・リース、フィリス・シャンド・オルフリー、ローレンス・スコットと日本統治時代の朝鮮半島で生まれ育ち、敗戦後、日本に引揚げてきた作家である森崎和江、小林勝、村松武司、五木寛之に着目した。その結果、そうした作家たちが、(旧)植民者の立場から自己省察的に、また時には自己批判的に植民地主義の過去・遺産を繰り返し想起しようと試みている点が明らかとなった。
|