研究課題/領域番号 |
18K12355
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研究機関 | 国文学研究資料館 |
研究代表者 |
黄 イク 国文学研究資料館, 研究部, 機関研究員 (10814808)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 夷堅志 / 太平広記 / 動物説話 / 殺生 / 怪異 |
研究実績の概要 |
本研究は『夷堅志』に見られる動物関連の説話を選出し、出典・動物の種類・関連人物・地域・時期・話題提供者・概要といった項目を記録し、データ化する作業を進めている。今年度は中国の明代に編纂された『新編分類夷堅志』と照らし合わせながら、丙志、丁志、支甲、支乙、支景の70巻における動物説話を抽出・分析した。これらの説話に見られる動物の殺生の罪と救済に関する描写に注目し、『太平広記』に収録された類似する説話との比較研究を行った。まずは『夷堅志』の説話は『太平広記』に比べて世俗性が目立つことを確認した。さらに、『夷堅志』説話の背景に不安定な政治状況が象徴的に表れている一方、早期の志怪小説に見られる怪を為す動物を殺すことによって怪異が消滅するパターンの話が減少し、人間の力が怪異の力に及ばなくなり、怪異によって人は悲惨の死を遂げる事例が増えていることを明白にした。このような変化は『夷堅志』説話の重要な主題を示す応報譚を考える時、新しい視点を提供してくれる。これらの研究成果を(台湾)仏光大学主催の「中国仏教文学与文化国際学術研討会」(2018年10月於(山梨県)仏光山本栖寺)において「動物故事中的殺生与救贖―以『太平広記』、『夷堅志』為例―」と題して発表し、その内容を論文「『夷堅志』における動物説話の特徴をめぐって」にまとめて『説話』13号(近日刊行予定)に発表した。 今後は続けて『夷堅志』支丁~三志壬、補巻における動物説話を抽出・データ化してその特徴を分析する作業を行い、その文化的背景を探る。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画どおりに研究を進め、研究成果も公表した。 ・「『夷堅志』における動物説話の特徴をめぐって」(『説話』13号、近日刊行予定)
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今後の研究の推進方策 |
今後は続けて『夷堅志』支丁~三志壬、補巻における動物説話を抽出・データ化してその特徴を分析する作業を行い、『太平広記』の類話、江戸時代に出版された『夷堅志』の説話を選出・和訳した『夷堅志和解』と比較しながらその文化的背景を探る。 『夷堅志』の作者洪邁が江西・福建・浙江などの地方官として赴任する間、多くの説話伝承を収集した。特に洪一族が江西の大族であり、『夷堅志』の話題提供者としてその族人が多く確認できる。2019年度は現在でも洪邁の墓地や遺跡が残っている江西省、浙江省での現地調査を予定しており、『夷堅志』説話が生まれた土地を実地踏査する。
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