研究課題/領域番号 |
18K12359
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研究機関 | 福島大学 |
研究代表者 |
佐藤 元樹 福島大学, 人間発達文化学類, 准教授 (00737942)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 融合体 / 省略現象 / インターフェイス / 量化子 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、これまで省略現象の研究分野で注目を浴びることがなかった統語的融合体について、(1)統語的融合体を構成している3つの部分(修飾部・中核部・省略部)の統語構造、(2)省略部における削除の認可条件と同一性条件を解明することである。令和元年度は、主節と融合体内部の両方と意味的な関係をもつ中核部の構造に焦点を当て、併合の観点から調査を行った。具体的な研究成果は、以下の3点である。 1.統語的融合体の意味的中核部に関係するwh句は、主節の動詞と融合体内部の動詞の両方と選択関係があることが先行研究によって指摘されている。文献調査の結果、2重の役割を持つように見られていたwh句は、構造的には、2重の併合関係がないことが分かった。融合体のwh句の選択制限は、融合体内部の併合により満たされる。 2.統語的融合体は、定形節の主語や受け身文の主語のように主格を付与される位置では使用することができないということが明らかになった。このことは、融合体の中核部には、何らかの統語的要因により、主格が付与されないことを意味している。中核部の格標示については、統語構造に関わる問題であるため、引き続き研究を進める予定である。 3.統語的融合体は、文脈に応じて、「ある」、「何か」、「多くの」、「少数の」に相当する量化の解釈をもつ。一般化量化子の理論を融合体にも援用することで、意味と統語のインターフェースにおいて、統一的な分析ができる可能性がある。今後は、統語的融合体を一つの量化子として扱うべきであるのか、融合体の一部分である修飾部だけを量化子として扱うべきであるのかを明らかにする必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和元年度は、前年度の成果に基づき研究を進めることができた。また、研究を進めることで、新たな研究課題として、量化の解釈と構造の問題が発見された。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の目的は、統語的融合体の統語構造の解明であったが、量化に関して意味論に関する研究も不可欠となった。そのため、生成文法理論の枠組みだけでなく、形式意味論や句構造文法の視点も取り入れながら、研究を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定をしていた学会および研究会が新型コロナウイルスの影響で中止および参加ができなくなり、また、海外出版の専門書の入手にも遅延があった。次年度使用額については、研究資料費として、新型コロナウイルスの影響を受けない電子書籍・雑誌の購入に充てる予定である。
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