2020年度はフィールドワークに行くことが出来なかったので、既存のデータ整備と分析に努めた。本2冊(著書1冊、共同編集1冊)、琉球諸語の語彙データベース2つ(共著)、論文1報を出版した。まだ執筆中の論文もあるが、2021年度中には提出予定である。 Nakagawa (2020) では、日本語東京方言の助詞、語順、韻律のそれぞれにおいて情報構造がどのように表現されているか(あるいはされていないのか)をコーパスを使って定量的に分析し、その類型論的位置づけや意義についても議論した。中川・木部編(2021) では、2019年8月に行った八戸方言合同調査のデータを収録し、数編の報告書を記載した。中川(2021) は青森県野辺地町の音韻を記述し、共通ごとの間で揺れながら変容していきつつある方言の発音を記録し、その記述の難しさを報告した。各方言に関する論文・報告書はすべて地元図書館や調査協力者に送付している。 加治工・中川 (2021) は鳩間方言の語彙データベースで、ダウンロード可能な音声ファイルにも関連付けられており、方言研究や学習の貴重な素材となると思われる。データベースから自動で変換したウェブサイトも公開しており、手軽に音声を聞くことができ、世界各地からアクセスできる。宮良・中川 (2021) はうちなーぐち活用辞典のデータベースで、テキスト形式なので正規表現を用いて検索することができる。これも研究や学習の貴重な教材となると思われる。
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