研究課題/領域番号 |
18K12364
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研究機関 | 東京外国語大学 |
研究代表者 |
児倉 徳和 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 准教授 (70597757)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 知識管理 / 文末詞 / コピュラ動詞 / 現代ウイグル語 / シベ語 / 「の(だ)」 / 「ている」 |
研究実績の概要 |
2019年度の研究実績は以下のようである。 ・統語的人称標示型言語である現代ウイグル語について、知識管理(発話参与者のもつ知識と、発話参与者が新たに獲得する情報の管理操作)に関わるコピュラ動詞 i- の機能の分析を行い、さらに前年度までの研究成果である同言語の文末詞の分析と統合することにより、コピュラ動詞が話し手が発話時においてすでに有していた知識と発話時に新たに得た情報の区別を表し、文末詞がそれら相互の関係(矛盾しているかしていないか)を表すというように現代ウイグル語の知識管理標示の体系をまとめ、研究発表を行った。 ・シベ語と同様に述語の人称標示を持たない日本語とシベ語の両言語において知識管理に関わる要素「の(だ)」とngge、「(て)いる」とbiXeの機能の対照を行った。そしてシベ語に日本語の「だ」に相当するコピュラ形式が存在しないことによりこれらの形式の機能の間に体系的なずれが存在すると結論し、両言語の差異について研究発表を行った。 ・シベ語のテンス・アスペクト形式について系統内で特徴的な要素、-maχeの来源について、この要素が音韻的な観点から共時的には動詞と補助動詞の連続した構造であり、補助動詞語幹がモンゴル諸語から借用された可能性を指摘し、研究発表を行った。 ・本課題で対象とする言語のうち、ハルハ・モンゴル語の知識管理に関わる形式(補助動詞bainaおよび文末詞)について基礎的な調査を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
・本課題で対象とする言語のうち、統語的人称標示型に入る現代ウイグル語について、前年度に引き続き知識管理のシステムをさらに体系的に明らかにすることができ、機能的人称標示型に入るシベ語との対照への見通しが立った。 ・シベ語と同様に統語的な人称標示を持たない日本語との対照により、統語的な人称標示のない言語における知識管理の体系の一般化が進んだ。 ・本課題で対象とする言語のうち、機能的人称標示の類型に入るハルハ・モンゴル語について基礎的な調査を行い、資料を採集することができた。
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今後の研究の推進方策 |
・現代ウイグル語とシベ語の知識管理標識について体系的な対照を行うことにより、本課題の中心的な問いである、統語的人称標示型言語と機能的人称標示型言語の間での文法の違いについて見通しを立てることを目指す。 ・ハルハ・モンゴル語の知識管理標識に関する調査と分析を進め、機能的人称標示型(そもそも人称標示を持たない言語も含める)に共通する特徴の解明を目指す。 ・統語的人称標示型言語の知識管理システムに関する分析を進めることと、統語的人称標示型言語が主流を占めるツングース諸語内における機能的人称標示型言語であるシベ語の文法体系の成立の過程の解明に向け、ツングース諸語を対象とした知識管理システムに関する調査と分析を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの感染拡大により、2020年3月に開催予定の研究集会が中止となったことに伴い、旅費がキャンセルとなった。当該旅費は2020年度以降の成果発表のための旅費に充当する。
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