研究課題/領域番号 |
18K12366
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
長屋 尚典 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 准教授 (20625727)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 言語学 / 言語類型論 / 文末助詞 / タガログ語 / オーストロネシア諸語 |
研究実績の概要 |
文末助詞は文にさまざまな談話機能・語用論的効果を付与する重要な要素であり、言語類型論や理論言語学においても盛んに研究されている。しかしながら、東南アジアを代表する言語の一つであるタガログ語においては文末助詞についての基礎研究が圧倒的に不足している。そこで、本研究計画は、タガログ語の 6 つの文末助詞 (e、o、a、ha、ano、diba) を取り上げ、これらが (a) どのような機能を持ち、(b) どのような音調と結びつき、(c) その機能と音調はどのような相互作用を達成しているかを明らかにする。研究計画2年度である平成31年度 (令和元年度) も基礎的研究に費やした。フィールドワークによってデータを集中的に収集するとともに、すでに収集したデータを分析し論文化を試みた。特に、文末助詞 e については基礎的研究を論文化しその論文を論文集 (英文・和文) に投稿した (2020年度刊行予定)。加えて、会話データに基づく ano の分析を改訂した。さらに、会話コーパスについては引き続き撮影・録音・文字起こしを行い、より包括的なデータ収集に努めた。これらに平行して、関連するタガログ語の現象の研究も進め、名詞化ならびに移動表現について発表した。特に、文末助詞の研究において重要となる情報構造について日本語の「は・が」との比較の観点から論文を執筆し、『言語研究』において発表した。さらに、タガログ語のストレスについて国際学会で発表を行った。国際学会 Southeast Asian Linguistic Society も主催した。このように本年度遂行した研究は上記研究目的を達成するための基礎となる重要なものである。また、複数の国際学会・国内学会でその成果を広く公開できた点でも意義深い。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和元年度は3つのことを目指した。まず、データ収集のための基礎研究である。この目標については夏季にフィリピンでフィールド調査を行い、会話データや実験データを収集することが出来た。また、成果発表も目標としていたが、こちらも国際学会でも国内学会でも発表しフィードバックを得られた。最後に、論文を複数本執筆・投稿し、一部は出版された。このように、当該年度に設定した目標を十二分に達成しているため、研究計画はおおむね順調に進展していると言える。もちろん、2020年1月以来のCOVID19問題によって海外調査が極めて難しくなったという現状もあるが、それでもすでに計画通り夏にデータを収集しているため、計画としては、おおむね順調に進展していると考えてよいであろう。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策は主に3つある。第一に、データのさらなる収集である。これまでの調査ですでにある程度のデータを収集することに成功しているが、 やはり十分とは言いがたい。したがって、令和2年度ではさらにデータ収集に励むことにする。COVID19に関連して最善の方法をとることにする。第二に、データのコーディング作業を進めることである。もちろん現地調査の段階からすでにコーディング作業は推進しているが、令和2年度はもっと進める必要がある。最後に、得られたデータを分析して研究課題で設定した問題に取り組む。既にいくつかのトピックについて論文の執筆を開始しており、今年度はそれらの論文の投稿・出版を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額 (B-A) が生じた理由は、学務上ならびに COVID19 の理由で調査予定が変更を余儀なくされたことが最も大きい。また、論文編集上の理由で英文校閲費用が当該年度に生じなかったこともある。この助成金については令和2年度の現地調査、英文校閲費、図書購入費として使用する予定である。
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